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三つの魔法と螺旋の星屑  作者: 長尾 驢
第2章「エリスの魔法」
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59話「実験2」

「耐性」はその名の通り、魔法にどれだけ体が耐えられるのかというもの。検査方法は単純で、魔法を直接体に流し込み反応を見て判断する。

「流動力」は魔力や魔法を体に受けた際に、体中に回る速度のこと。これを調べることによって、その人の魔力の弾力性や活発度合いがわかる。検査方法は頭頂部から魔力を流し、足先にその魔力が到達するまでの時間を計る。

「効率」は魔力を消費してどれだけの魔法を発現させられるかということ。魔力効率が良ければ、少ない魔力で多くの魔法を使うことができる。魔法に関しての一種の指標として、才能の有無を判断できる。検査方法はアイテムに魔力を流してその魔法がどれだけの時間維持できるのかを計測する。

「魔力量」もその名の通り、魔力をどれだけ保有しているのか。量が多ければ単純に魔法を多く使用できる。しかし、多いことでのデメリットもあり、魔力暴発になった場合や魔力切れから発症する魔力症も重度のものになる可能性がある。検査方法は魔力切れまで魔法を使うだけ。

 これらの検査を経て、エリスの数値はどれも基準値を超えている。まだ魔法が使えていないだけで、もし使いこなせるようになった場合、天才と称される人材となるだろう。

 ゴルゴンは、かなりの潜在能力を秘めた子供だとわかると、途端に実験に使うことに後ろ髪を引かれる思いが芽生える。

 高級食材を前にして、どう調理するのが最適解なのか決めかねている料理人と同じような心境で、目の前にいる麻酔の抜け切らない少女を見やる。

「今回の実験は『緑』だ。おそらく今までの被験体のようにはならない。が、今回の被検体は貴重だ。万が一のことがあった場合は、即刻実験を中止し被検体の回復に努める。以上だ、各々準備を続けてくれ」

 覚悟を決め、実験続行を周囲の研究員に伝える。

 その命令を聞いた各研究員は再び自分のすべきことに取り掛かりだす。

「この被験体は……絶対に手放すわけにはいかない。俺も最新の注意を払って、今まで以上に集中して実験に取り掛かるとするか」

「じっ……けん?」

 エリスは、ぼんやりと虚ろな目を浮かべ、覗き込む男性の顔を見る。

 意識はあっても脳が起きていない状態では、直前に聞こえた単語を繰り返しただけで、どういう内容を話していたのかは理解できていなかった。

「期待しているぞ、エリス」

「……」

 不敵な笑みを浮かべたゴルゴンは、ポケットに手を突っ込んだまま短くエリスに声をかける。

 今までの失敗を覆す可能性を持った少女が目の前にいることによる興奮と、自分のキャリアが数段積み上がる事を確信しているために滲み出た笑みだ。

 素晴らしい人材を確保した者に褒美を出すことを考え、何が良いかと思案する。

 研究者にとって嬉しいものは、研究が成功すること。何か物をもらって嬉しいを感じることは少ないと経験則から導き出し、物ではなく権利が良いのではないかと思いつく。

「次の実験を主導する権利をやろう。いつも俺の実験に付き合わせているだけでは、研究員としては一人前と言えないからな」

 そうと決まれば、さっそく人探しをしておかねばならない。

 ゴルゴンは一旦その部屋を後にし、手の空いている研究員を探してその事を伝える。今の実験が終わり次第、招集をかけるので待機しておくようにと。

「念のためもう一度実験のおさらいをしておくとするか。この実験は絶対に失敗できないからな」

 そう言いながら彼は再び実験室に戻ると壁を背にしてもたれかけ、目をつむり考え始めた。

 まずは軽度の負荷を体に与え、魔力の動きを見る。その動き方によってタイプを分け、タイプごとにもう一度負荷を与える。そうすることによって魔力を刺激し、次の実験を行いやすくする。

 準備運動のような実験を終え、少し休憩した後に本格的な実験として、魔法を強制的に発現させ、その感覚を体に覚えさせる。

 これを暫くの間行い、魔法に慣れさせた後、新たな魔法の開発を開始する。

 予定している新魔法は、今まで誰も成功していない雷を操る魔法と物の耐久力を上げる魔法などだ。

 果たしてどういう反応を示すのかは想像つかないが、大まかな研究の順序は変更なく進める。

 ただ、薬品についてはもう一度考えるべきかもしれない。少なくとも、これほどの耐性を持っているのであれば用意したものでは、効果がない可能性がある。

「やはり、最初の負荷実験の後で一度研究計画を練り直すべきか……」

 魔法の負荷をかける方法は、薬品の濃度によって変わる。どの程度まで耐えられるのかわかれば、その後の濃度も調節することが可能になる。

 先程用意したものは、今までの被検体に投与した量よりも少なめにしている。失敗が続きすぎたため、初歩の部分の条件を緩め、できるだけ被検体を変えることがないようにする目的がある。

「ゴルゴン先生、準備が整いました」

「ん? あぁ、わかった」

 考えている最中に正面から声がかかる。

 まとまらない思考を中断し、目の前の実験に集中する。

「では、実験を始めよう」

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