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三つの魔法と螺旋の星屑  作者: 長尾 驢
第1章「始まり」
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18話「自己紹介」

 クラス分けの後、生徒たちはそれぞれの教室に案内されることになった。広大な学校の廊下は迷路のようで、どの扉も一見同じに見える。案内役の先生が手際よく進む姿を見ながら、オークスはふと窓の外に目をやった。そこには学校の広大な中庭が広がり、中心には巨大な古木がそびえていた。その木は、まるで何百年もの間この学院を見守り続けてきたかのような存在感を放っている。

 その木の周りには花壇が設けられており、目を奪われるほどの美しい純赤のバラが咲き誇っている。

 風が吹けば落ちたバラの花びらが舞い上がり、まるでこの学校に来た生徒を歓迎しているかのようだった。

 クラスBの教室はホールから少し離れた静かな棟にあった。天井には小さな魔法陣が刻まれており、室内全体が柔らかな光で満たされている。机は木製で温かみがあり、それぞれに手彫りの装飾が施されていた。

 「ようこそ、クラスBへ。」

 教室に入ると、先に待っていた女性が優しく微笑んだ。彼女は肩までの銀髪と透き通るような青い瞳を持ち、ローブの襟元には小さな金のバッジが光っている。

 教室もさすが新設されただけの建物。どこを見ても眼を奪われるほど精巧な作りをしている。

 扇形に広がる教室は、教壇に向かってテーブルの位置が下がっていく造りをしており、テーブルは合計で10卓。中心に移動するための通路が設置されている。

  教壇の後ろには大きな板が設置され、そこには大きな字で「入学おめでとう」と書かれ、各生徒の席が指定されていた。

 「私はこのクラスの担任を務めるセリーヌ。魔法史と基礎魔法学を担当します。まずは、みんなで自己紹介をしましょうか。」

 セリーヌが促すと、一人ずつ前に出て名前と簡単な自己紹介をしていくことになった。

 オークスの順番が回ってくると、教室全体の視線が集まり、心臓がさらに早くなるのを感じた。

 「え、えっと……オークスです。隣の『ダイネ』の街から来ました。……精一杯頑張ります」

 緊張で声が少し震えたが、なんとか言い切った。すると、セリーヌが微笑みながら言った。

 「いい目をしているわね、オークス君。自分のペースで学んでいけば大丈夫よ。」

 次にリョカが前に出て、自己紹介を始めた。

「どうも。お初にお目にかかります。アルスベルト商店商長――――ルーグラン・ルーミー・アルスベルトの息子、リョカ・ルーミー・アルスベルトです」

 リョカが自身のフルネームを紹介すると、教室内がどよめき始めた。

 それもそのはず、アルスベルト商店とはつい先日、本店が賊に襲撃され、資産の三分の二を失い、失墜した貴族の名前だったからだ。いまだにその賊は一人も見つかっておらず、もちろん確保もされていない。

 アルスベルト商店には稀代の一品が数多く陳列され、その中には歴史的な価値もあったとされる品もあった。それらがごっそりと奪い取られた大事件。

 民からの信頼が薄れるような失墜の仕方はしていないものの、あまりの損害に返り咲くまでに相当な時間がかかると予想されていた。

「リョカ君……お父様のこと、商店のことは残念な事件でしたね……」

 申し訳なさそうにセリーヌは言った。

 「ええ……本当に」

 目線を落として答えるリョカに、その心象の暗さがうかがえる。

 自己紹介を終えるとリョカは自身の席へと戻っていった。

 セリーヌは黒板の前に立ち、きりりとした眼差しで全員を見た後、最初の授業が始まった。

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