表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/57

第46狐 「修学旅行は恋の予感」 その2

 船から降りて簡単な説明が終わると、いよいよ自由行動の時間じゃ。

 じゃが美しい街並みを航太殿と楽しみながら過ごせると思っておったら、夕方までに隣町までトレッキングで辿り着かねばならないと言われてしもうた。

 なんで修学旅行で鍛錬遠足の様な事をせねばならぬのか分からぬが、宿泊するホテルがそこに有るそうじゃから仕方がない。

 とはいえ時間はたっぷりある。先ずは美しい海が見えるレストランで食事じゃ!


「航太殿、一緒に行くのじゃ!」


 紅や静さんに奪われる前に、急いで航太殿の手を握りしめて歩き始めた。

 航太殿は文句も言わず素直に付いて来て下さる。サングラスが凛々しいのう。

 青や赤の色を上手に配した白壁の建物と、辻々に植えられている花々。

 特にブーゲンビレアとかいう華やかなピンクの花がこぼれそうになるほど咲いておるのが綺麗じゃのう。

 真っ青の空と一緒に眺めておると、余りの美しさに呆けてしまいそうじゃ。


 白壁に囲まれた人とすれ違うのが大変な細い路地を抜けると、ぱっと空が開けて透き通る海が視界に飛び込んで来たのじゃ。

 岩肌に所狭しと並んでいる建物が白く輝き、海と空の青さを一層引き立てておる。この世の物とは思えぬほどの美しさじゃ。


「おおっ! そこの眺めが良いレストランで食事をするのじゃ! 航太殿こっちじゃ」


 航太殿の手を引き、海にせり出したレストランの端の席に座ったのじゃ。

 ガラス越しの海が足元に見えて、まるで海の上に浮いている様じゃのう。

 

「おー! ここ凄く綺麗じゃん! 美狐ちゃんナイスチョイス」


「まあ、本当に美しいですわね」


「美狐さ……ちゃん。あまり勝手に歩いて行かないでよ。困るじゃない」


「お腹が空いたニャア! シーフードニャ!」


「綺麗っキュ♡ PVの撮影はここが良いっキュー♡」


「ふふふ、やっぱり海は良いわね。アバンチュールが私を待っているわ」


 美しい景色を観ながら航太殿と二人きりで食事と思っておったのじゃが、結局、皆が付いて来ておった。

 まあ、こうなる事は分かっておったがのう。いつも通りじゃな。


「みんな歩くのが早いなぁ。鳥雄と必死で付いて来たよ」


 真っ白のハーフパンツに胸元が開いたブルーのシャツを着た白馬が遅れてやって来た。サングラスを外すと、周りの女子から黄色い声が上がっておる。妾には分からぬが格好良いらしいのう。

 じゃが、白馬が来たという事は……。


「白馬くーん、私達も一緒で良いよね! トレッキングも頑張ろうね!」


 猫なで声の蛇蛇美と蛇子、やはり来おったか。ということは……。

 予想通り、紅よりも胸を露出させた白いワンピースの金髪娘が、航太殿の横に割り込んで来おった。


「Oh! コータ! やっと見つけマシター! 今日はこれからエターナルに一緒デース!」


 言うや否や航太殿に抱き付きおった。


「蛇蛇美! 白馬は連れて行って良いから、こやつを連れてどっかに行かぬか!」

 

「えー、私達はそれで良いけど、蛇澄美がどうするかは知らないわよ。それに蛇澄美は頼りになるから離れたくないのよ」


「蛇澄美が頼りになるじゃと? 何でじゃ」


「じゃあ料理を注文してみてよ」


「ん? 何を言っておる、簡単な事じゃ」


 蛇蛇美が訳が分からぬ事を言っておるが、取り敢えず料理を注文すればよいのじゃな。

 ここはひとつ美味しいシーフードパエリアなどでも注文しようかのう。

 メニューはこれじゃな。さてと……。


「うっ」


「どうした美狐? 早く注文しようぜ!」


「お、おお、そうじゃな。それはそうと静さんは何を頼むのじゃ? 先に選んでよいぞ」


「まあ、美狐ちゃんありがとう。えっと、私わぁ……あっ……べ、紅ちゃん、お先にどうぞ」


「ああ分かった。じゃあ先に選ばせて貰うぜ! えっとぉ……何じゃこれは? 全く読めないじゃん!」


「ほらね。あんた達もここの文字全然読めないでしょう」


 蛇蛇美が勝ち誇った様な顔をしておる。

 悔しいが、誰もメニューすら読めなかったのじゃ。


「Oh! ワタシダイジョブでーす! ゲレイシアにはスリーイヤー住んでマシター」


 何じゃと……蛇澄美はここの文字が読めるとな。

 蛇澄美がメニューを受け取り、航太殿に密着しながらメニューを広げておる。


「コウタはナニ食べたいデースカ? これがパスタで、これがパエリーア、シュリンプやムール貝もオイシイヨ」


 仲睦ましそうに料理を選ぶ姿を見せつけられて悔しいのう。

 じゃが、これは反撃が出来ぬ。


「ミンナも食べたいモノを言ってクダサーイ! ワタシが注文してあげマース」


 妾達は誰もメニューを読むことが出来ず、蛇澄美にお世話になるしかなかったのじゃ。

 こうなると、この先も蛇澄美無しで行動する事が出来なくなってしもうた。航太殿に密着する姿は口惜しいが、致し方が無いのう……。




「あー、本当に美味しかったぁ。景色は最高、料理も最高。本当に夢みたいな島だな!」


「景色を見ながら外で食べるから余計に美味しく感じるのかしら。本当に美味しかったわ」


 皆満足そうにしておる。注文こそ出来なんだが、妾が頼んだシーフードドリアはとても美味しかったのじゃ。

 それに途中で航太殿が頼まれたパスタと交換したのじゃ。

 頼んだら笑顔で交換して下さった。やはり妾の航太殿じゃ。

 ん? 航太殿どこを向いておる。


「蛇澄美ちゃんありがとう。薦めてくれたパスタ、とても美味しかったよ」


「Oh! 喜んでくれたならウレシーイデース!」


 蛇澄美がいきなり航太殿に抱き付きおった! ハグとか言っておるが、抱き付いておることに変わりはないではないか!

 それに、なんじゃ、航太殿の嬉しそうなお顔は。

 しかも蛇澄美の胸元が開き過ぎじゃ。航太殿の視線が釘付けではないか。

 本当に色々と口惜しいのう……早くこの店から出るのじゃ!




 今宵の話しも、ここまでなのじゃ。

 今日も誰よりも見目麗しいのは、わらわであろう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ