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エッセイシリーズ

散歩

作者: 夢野亜樹

散歩をしていると無性に木を蹴りたくなった。イライラしてるとか八つ当たりとかそう言うことじゃなくて、ふと木を思い切り蹴りたくなったのだ。


僕は木を蹴る自分を想像してみた。木の前に立ち、右足で思い切り蹴る。足の甲がじんじんと痛むけれど、木を蹴った快感でそんなものは気にならないだろう。しかしここは人通りの多い道で、五人くらいが僕のことを変な眼で見てきて、十人くらいが木を蹴った音に反応して僕を見るだろう。何をしたんだと言うように。

僕はその視線に耐え切れるだろうか、いや耐えきれない。全速力で走り去らないといけなくなるだろう。


結局僕は「変な眼で見られたくない」と言う意識が「木を蹴りたい」と言う意識に勝り、帰路に着くことにした。


途中、柔道衣を着た高校生くらいの女の子が、母親らしき人と立ち話をしていた。これから道場に行くにしてはリュックも何もない格好で身軽すぎる。ランニングに行くにしてはその服装はそぐわない。僕は彼女がどうして道端で道着を着て立っているのかをあれこれ考えたが分からず、僕は疑問が残ったまま彼女らの前を通り過ぎた。


僕が通り過ぎた後で、「よろしくお願いします!」とさっきの道着を着た女の子が叫んだ。

僕はとても気になったので少し振り返ってそれを見たくなった。しかしさっき僕が想像した、木を蹴った後のすれ違う人の視線。あの視線に今度は僕がなるのかと思うと見てはいけない気がした。

それからまた「よろしくお願いします!」と言う声が聞こえた。女の子がまた何かを始めたのだろう。

僕はその声を背に、母親に技をかける女の子、練習した形を撮影している様子を想像し、その場を後にした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 己の欲せざるところ、人に施すことなかれですね。でも、町中で変わったことをしている人がいたら、思わず凝視してしまいたくなる気持ちも分かります。
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