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二人の男が来た次の日、洞窟の入り口付近で怪物と一緒に向かい合わせになるようにして座っていた。
「助かった!」
「礼を言う。ありがとう」
「…」
青年は何も言わず、返事を返すように軽く頭を小さく下げる。
「で、悪いんだがあの洞窟にあったマジックバックなんだが、イテェ! 叩くなよクラトス!」
「馬鹿、ロッソ。こっちの事情を話さず質問をするんじゃない。すまなかった。俺達は…」
彼らの事情を簡単に言うとこうだ。
天獄から一番近い国から調査団として来たが、度重なる魔物の襲撃でバラバラになって二人で彷徨い歩いている内に此処に辿り着いたとの事だ。
「それで、逃げてる最中にマジックバックを落としてしまったんだ。すまないがあの洞窟にあったマジックバックを分けて欲しいのだが…」
コクリ
再び頭を小さく下げ肯定の意志を示す。
あの洞窟の奥にあったマジックバックや武器や防具。あれは怪物が集めた物で魔物を狩りに行った時に稀に怪物が持って帰るのだ。
けど使ったところは見た事がない。ただ集めるだけの様子。
「…ありがとう。それで…」
その後、クラトスはいくつか質問をしたが青年は小さく頷くか首を横に振るだけで喋る事は無かった。
青年はクラトスと話すのが嫌だった訳ではない。ただ、人との話し方が分からないのだ。
最後に人と話をしたのがいつだったか、もう覚えてない。
「ところで、今更で申し訳ないのだが名前を教えてくれないだろうか」
名前…
自分の名前…
「……ナナシ」
少しの間があった後、青年もといナナシは乾いた声で言った。
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