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最愛の怪物  作者: 夜霧
3/7

3

 



 ある日、青年は森の中を怪物に手を引かれながら歩いていた。

 

 あれから傷はもう完全に治ったのだが、怪物は青年を気遣っているのか、ゆったりとした歩みで青年の手を引く。


 時折魔物の鳴き声や姿を見かけるが、怪物の姿を見るなり逃げて行く。魔物も分かっているのであろう。怪物に敵わない事を。


 歩き続けて辿り着いた場所は大きな湖。

 怪物は周りを見渡し、魔物が居ないのを確認すると握っていた青年の手に髪を巻きつけ始める。


 髪は薄い手袋の様になると怪物の髪と切り離された。


 青年は手を動かし感触を確かめていると、いつの間にか怪物が居ない。

 辺りを見回すが、見えるのは湖と木々だけ。


 一人になった今、青年は周りを警戒しなければならない。魔物からすれば怪物という脅威が無くなった青年は、まさに格好の餌でしかない。


 だが青年は周りを警戒する事は無く、ただじっと怪物の髪が巻き付いた手を見る。


 怪物が傍に居ない事がどれだけ危険かを理解してない訳ではない。


 何も感じないのだ。


 先日の満身創痍になった時もそうだ。あれは怪物が食事の為に魔物を狩りに行ってる留守の間に、魔物に襲われたのだ。


 幸か不幸か不明だが、襲ってきた魔物は青年を直ぐには殺さず反応を楽しむかの様に甚振る。魔物に玩具の様に甚振られる中、青年は「これは死ぬな」と、どこか他人事の様にしか思えなかった。


「グルルルルル!」


 鳴き声がした方を向くと、視線の先にいたのは魔物。襲って来るかと思ったが、少し様子が変だ。


「グルルルルル!」


 魔物は襲って来る様な様子は無く、青年を警戒するかの様に鳴く。

 おかしい。魔物からすれば、青年など取るに足らない存在の筈。試しに一歩近づいてみると、魔物は急に怯えた様子になり逃げ出す。


 その後も何度か魔物が現れたのだが襲って来る事はなく、この湖は魔物の水飲み場なのか水を飲むとすぐに去っていく。


 魔物が襲ってこない理由だが、おそらく手に巻き付いた怪物の髪だろう。髪から怪物の匂いを嗅ぎ取ったのかどうかは分からないが、魔物避けの効果がある様子。


 くいくい


 不意に横から何かに引っ張られる。見るといつの間にか戻ってきた怪物が「行こ」とばかりに腕を引っ張っていた。


 怪物に従い行ことすると、手を差し出される。おそらく来た時と同じ様に手を握りたいのだろう。


 青年は差し出された手を握ろ…うとはせず、伸ばした手で怪物の頭を撫でた。最初はキョトンとしていた怪物だが、やがて気持ち良さそうに目つむる。


 青年自身、何故怪物の頭を撫でようと思ったのかよくわらかない。もしかすると無意識のうちに怪物を喜ばしたいと思ってやったのかもしれない。


 その後、暫く怪物の頭を撫で続けた。



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