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最愛の怪物  作者: 夜霧
2/7

2

 



 青年が目を覚ますと側に怪物は居なかったが、自分を包んでいた髪はそのまま残っていた。

 起きようとして体を動かそうとすると、その意図を汲んだかのように髪が解けていく。


 あれから日が経ち、傷も大分癒えてきた。まだ動かす度に痛みはあるが、我慢出来ない程ではない。


 洞窟の外に出ると怪物が倒したのだろう巨体の魔物の死体があり、怪物は伸ばした鋭利な爪で魔物の腹を引き裂き肉や内臓、骨を貪っていた。


 青年の気配を感じたのか怪物は青年の方を向くと笑みを浮かべる。そして魔物の腹に手を入れそこから大きな肉の塊を取り出し青年に持って行く。


「はい、どうぞ」と言わんばかりに目の前に差し出された大きな肉の塊。だが大き過ぎる。大人一人分の大きさだ。受け取って欲しいというのは分かるのだが、体の痛みで正直受け取れそうにない。


 どうするべきか悩んでいると、何を思ったのか怪物は差し出した肉を食べ始める。そのまま咀嚼すると肉を置いて青年に抱きつき、なんと口移しをしたのだ!


 抵抗しようとしたが、体の痛みのせいで上手く力が入らずぎこちなく動く事しか出来ない。生肉を口移しされている訳だからこの上なく不味い。それに今の怪物は口元や手と体が血まみれで血生臭さかった。


 何とか飲み込んだが、抱きついたまま離れようとしない。それどころか再び口移しをする為か髪で先程地面に置いた肉を引き寄せ食べ始める。


 首を横に振ってやめて欲しいと訴えるが、怪物は意に介さずに再び口移しをする。





 それから青年は怪物に肉の塊の三分の一程を口移しされ、激しい嘔吐感と気持ち悪さから気を失った。





 ================





 目を覚ますと逆さまになった怪物の顔があった。

 なぜ?、と疑問に思ったが後頭部から感じる柔らかい感触から膝枕をされているのが分かった。


 血まみれだった怪物は水浴びでもしたのかいつもの姿に戻っていた。


 青年を見る怪物の表情はキョトンとしたもので「どうしたの?」とでも言いたげだ。


 そんな怪物に対して何も言う事はない。

 この怪物なりに自分の事を気遣ってやった事なのだろう。というより、この怪物に常識を求めるのが間違いだ。見た目は美しい女性に見えても、中身は怪物なのだから。


 けど、嬉しかった。全てを失った青年にとって、この怪物が傍に居てくれる事が嬉しかったのだ。


 ありがとう、とお礼の意味を込めて笑いかけると、怪物も笑みを浮かべる。


 すると怪物は急に青年の身体を持ち上げ、怪物の身体を椅子にする様にして膝の上に青年を座らせ後ろから抱きつく。

 何事かと思い後ろを向くと、怪物の口が耳元まで裂けるのが見えた。


 これから何をされるのか理解した青年は首を横に傾ける。


 首に痛みが走る。だが次の瞬間には噛まれた部位から酩酊感と、心地よい快楽が発生する。

 やがて、吸い上げられる感覚は、何かが注ぎ込まれる形に変化する。青年の体液と怪物の体液が混じり合う。通常であればおぞましくて背徳的な行為だというのに、そこには逃れら得ぬ快楽があった。




 青年は眠るように目をつむり、吸血による快楽にそっと身を任せた。

感想などがあれば、作者の励みになりますのでお願いしますm(_ _)m

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