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闇属性カースト

「まぶしいなぁ。その光り目は、お前さんの連れかい、坊主?」


 人影がしゃべりかけてくる。ぬんとリコの放つ光の輪の中に姿を表したのはぼろぼろのコートをまとった壮年の男だった。


「あ、ああ。こいつはリコ。俺はレプリだ」俺は警戒しつつも名乗っておく。


「はは、一丁前な口をきく餓鬼だ。こちとらガッソと呼ばれている。よろしくな。で、レプリは闇属性カーストのもんじゃあ、ねえな。その年だと、もう属性持ちだろ。どこの養育院だ?」


 とコートについたフードを外す男。

 現れたのは深いシワの刻まれた顔に、灰色の短髪。金色に輝く鋭い目付きは猛禽を思わせる。

 しかし、にやっと笑った顔には妙な愛嬌を感じさせる。俺はレプリの記憶から目の前の男が闇属性カーストの者だと理解する。


 俺は無言で首を振った後に付け足す。「訳あり、なんだ」


 ちらりとまだ湿っている俺の右手を見るガッソ。

「ほう、まあいい。こんなところに餓鬼が一人でいるなんて訳あり以外のなにものでもねえよな、ハッ」


 そういうと、その場でどかりと座り込むガッソ。コートで見えなかったが、背中の背嚢から何か取り出す。

 そのまま、ずいっとこちらに差し出してくるガッソ。どうやら肉っぽい。


「さて、訳ありのレプリさんよ。もし、ここで生きていくってんなら、これを食いな。まあ食えねってんなら、さっさとここを離れるのをお勧めするぜ」


「これは?」俺はしげしげと赤黒いそれを眺める。


「肉さ」と、それだけしか言わないガッソ。


 俺が待っていても、何も言わないガッソ。

 喉の乾きは癒えたとはいえ、激しい空腹も抱えていた俺は、そっとガッソの差し出す肉を手に取る。


 リコの放つ光で見えるそれは、何かの生き物の生肉のようだ。


 ──少なくとも、腐ってはなさそうだ。肝臓か何かか?


 一瞬の躊躇の後、俺は空腹におされ、その生肉を口にする。

 口一杯に広がる特有の獸臭さ。

 広がる血の味。


 俺はわ沸き上がる嘔吐感を抑え込み、肉を噛み締める。

 臭みの奥に僅かに存在する旨味と滋味。


 俺は何とか吐き出すことなくそれを飲み込んだ。


 その様子をまじまじと見ていたガッソ。

 リコにも同じ生肉を差し出している。器用に前肢で肉を受け取り一心不乱にかじりつくリコ。


「よし。訳ありのレプリとリコ。お前さんらを歓迎しよう。ついてきな」


 そういうと、立ち上がったガッソが片手を上げる。

 それを合図に、リコの光の届かない闇の中から複数の男達が進み出てきた。


「俺らの集落に案内するぜ」というと歩き出すガッソと男達。

 俺とリコは慌てて彼らを追いかける。

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