表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/14

出会い

 俺が必死に滲みでる水をすすっていると、背後から音がする。

 弱った体で、精一杯急いで背後を振り返る。


 そこに浮かぶのは、二つの光。


 ──目だ。


 光っている。


 その光でうっすらと輪郭が見える。

 どうやら痩せ細った獣のようだ。小さい。


 俺は必死にレプリの記憶を探る。しかし、光都から出たことのなかったレプリの記憶にはそれらしいものはない。

 僅かに、荒野に獣がいるらしいと言う記憶があるぐらい。


 俺の前世の記憶で言えば、目の前の獣は子キツネとリスの中間ぐらいに見える。

 もちろん、光源が目の前の獣の目から出ている光だけだから、はっきりとは見えないが。


 しかし、目が覚めて、十数時間ぶりの光。思わず、魅いられてしまう。


 獣は舌をだらりとたらし、俺の手のひらから滴る水をじっと見ている。


 俺の中のこの世界で生きた感性が、目の前の獣を殺して食べろと囁く。

 しかし、俺の前世の記憶がそれを邪魔する。


「こいつの目。光属性持ちか。ほら、こいつを手懐けられたら光に困らないだろうしさ」と思わず言い訳めいたことを呟く俺。


 俺はゆっくりと手のひらをその獣に差し出す。


「ほら、喉、乾いてるんだろ?」


 俺の言葉は当然伝わっていないだろう。目の前に差し出された水分に引かれるように、徐々に近づいてくる獣。


 すんすんと手のひらの水の臭いを嗅ぐと、伸ばした舌で舐め始める。


 手のひらをくすぐる獣の舌。灯された獣の瞳。

 それは捨てられ暗闇をさ迷っていた俺にとって目に焼き付く光景だった。


「名前をつけてもいいかな」


 俺のそんな問いかけなど無視して手のひらの水分を舐めとる獣。


「なんて名前がいいかな。……リコとかどう?」


 当然反応するはずもない、リコ。俺は反対がないと言うことでリコと名付けることにする。

 その間に、満足するまで水を飲んだのか、リコは手のひらを舐めるのをやめ、ゆっくりと横たわる。

 そのリラックスした様子に俺は思わず苦笑する。

 俺は相変わらず出続けている水で軽く手のひらを洗う。


(そういや、この水、どれくらい出せるんだろう?)


 目を閉じると、自分の心の片隅に、水が流れ出している扉が見える。重厚で、表面に何か紋様が刻まれている。

 それは僅かに開き、その隙間からチョロチョロと水が漏れ出している。

 俺は意識の中で扉を閉めてみる。

 ゆっくりと閉まる扉。水の流出が止まる。

 それに合わせ、手のひらから出ていた水も止まった事がわかる。


 ふと意識の中を見渡すと、あと五つ、扉があるのがわかる。どれも重厚だが、表に刻まれた紋様が違う。


 ためしに、水の扉の右側にある扉を開けようとしてみる。


 ──がっちりと固定されていてびくともしない。


 次々に試していくがどれも微動だにしない。

 俺は諦めて目を開く。

 リコが目を閉じたせいでそこは暗闇が広がっている。ただ、リコの息づかいだけが聞こえる。


「あの扉が魔法を使う手段っぽい。水属性魔法以外は使えないのか……」


 急にリコが起き上がる。

 開かれるリコの目。


 そこから放たれる光で、うっすらと人影が浮かび上がる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ