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セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する  作者: にしのムラサキ
【分岐】山ノ内瑛
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悪役令嬢は話し合う


 結局、後日いろんな話をまとめてみると、いじめの原因は、東城さんが好きな男子とひよりちゃんが付き合ってるのがむかついた、ってことみたいだった。もちろんその「好きな男子」ってのは如月くん。

 東城さんの告白を「付き合ってる人がいるから」って如月くんは断った。


「なんか、全然ヨユーで略奪できるとおもってたみたい」


 今日も今日とて悪役令嬢会議、ってか単に千晶ちゃんとダラダラカフェでお茶。


「マジ? あんなラブラブなのみせつけられてて?」

「うん。ひよりちゃんは所詮は身分が違うんだから、って。自分が告白すれば、如月くんも目が覚めるとかおもってたんだって」

「なんだそりゃ」


 千晶ちゃんの口調が変になって、思わず苦笑いした。まぁ、それくらい呆れちゃったってことなんだろうけれど。


「で、余計東城さんは捻くれて、その怒りの矛先がひよりちゃんへ向かった、と」

「なるほどね」

「……東城さん1人じゃなにもできないみたいだったから」


 私はあったかいココアに口をつける。


「"お友達"に釘刺して回った」

「釘?」

「ひよりちゃんに手を出したら」


 思い出して、すっと目を細めた。……怯えた顔、してたなぁ……。


(でも、怯えてもらわなきゃ困るんだ)


 私は自分の「家」の権力をふりかざした、んだと思う。言外にも、なんならはっきりと口にもした。それは「常盤」を敵に回す、それに他ならないのですよって。


「いいね」


 千晶ちゃんはいつものカフェで、暖かいカフェオレ片手に口を尖らせる。


「悪役令嬢面目躍如ってかんじ」

「したくなかったんだけどね〜」


 軽く肩をすくめる。でも、仕方ない。使えるものはなんでも使う。


「と、まぁ。半ば本当、半ば口実で、元からひよりちゃんが気に食わなかったっぽいんだよね」


 ひよりちゃん可愛いから、と私は続けた。


「でも、まぁ」


 千晶ちゃんは、ひとくち、カフェオレを口にした。


「とりあえずは、これで"いじめ"は解決、だし。華ちゃん、お疲れさまでした」

「ううん、たまたま居合わせて。ほんとに良かった」


 私たちは笑い合う。これで、当面の問題は解決したと、そう信じていた。

 もちろん、しばらくは気が抜けないけれどーー。

 しばらくして別の話題に話が変わる。このところの数学が難しいとか。


「中学生っぽい話題よねぇ」

「ふふ、まぁソトガワは中学生だからね」


 私がそう言ったとき、窓の外から大きな音楽と、拡声器で音割れした男の人の声が響き渡る。


「選挙?」

「や、これあれだよ。こないだの」

「あー、変なノストラダムス的な……」


 まだこの辺いたのか。


「信じちゃダメだよ?」

「し、信じないってば!」


 そんな会話をした日から、しばらく経って、のことだった。窓の外は、ちらちらと雪が舞っていた。

 ひどく冷え込んだ12月初めのその日、ひとりの女の子が転校してきた。


「石宮瑠璃さんです」


 先生に紹介されたその子に、私は見覚えがあった。ふわふわの色素の薄い髪、綺麗な顔立ちの女の子。


(……誰だっけ?)


 ふ、と脳内で焦点が結ばれた。


(え、あ、うそ!?)


 昔、小学生の頃、樹くんといるところに絡んできた"ゲームの記憶"がある女の子!

 ちらりと目線が合う。思わず目をそらして、私は窓の外を見た。曇天からは絶えず雪片が舞っている……。

 帰宅してすぐ、電話でその話をすると、千晶ちゃんはハァとため息をついた。


『石宮瑠璃だよね? うん、ヒロインで間違いないと思う』

「う、うわぁ」

『わたしが悪役令嬢なゲームのヒロインさんです』


 そう千晶ちゃんは断言した。

 どうなんだろう、小学生のあの性格のままなんだろうか……?


(だとすれば私、目の敵にされるよね!?)


 それはものすごく嫌だ……。


『記憶か~、どうなんだろ、こっちも邪魔しないからアナタも関わらないで、で通じる相手かな?』

「……小学校のときなら微妙なかんじだけど、今ならいける、かも」


 だって今日は何も言われなかったし。少し性格とか、考え方も変わったのかもだ。希望的観測すきる?


『……なんとか2人きりになれないかな』

「え、大丈夫? 千晶ちゃんが話すの?」

『彼女のゲームの登場キャラのほうが、話を聞いてもらえるかなって』

「そうかなぁ」

『わたしの方がゲームの内容も知ってるし。悪役令嬢と2対1だと、警戒されちゃうかもだから』


 千晶ちゃんが軽く息をつく音がする。


『ま、とりあえずダメなら報告するね』


 そう言って笑う。私はほんの少し、なんだかよく分からない不安を残しながらも、それに頷いたのだった。

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