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セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する  作者: にしのムラサキ
【分岐】山ノ内瑛
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【side瑛姉・充希】弟の想い人

 家に着くと、ハイテンションな妹2人に玄関で出迎えられた。


「瑛には内緒にしてんねんー」

「まだ帰ってないねんけどな」

「おどろかせよー」

「つか可愛いっ」


 ハイテンションの芙津希と皐希に押されつつ、華ちゃんは「今日よろしくおねがいします」と頭を下げた。


(えらいしっかりしてる子ぉやな)


 道すがらも話ししよって思いよったけど……と思った後に、「この子そういやご両親がおらへんのやった」と気がついて少し複雑になる。


「次女の芙津希と三女の皐希」


 気分を変えるように、あえて明るく、横から伝えた。

 リビングから一番下の弟、優希も顔を少し出して、ぺこりと頭を下げていた。すぐに目を逸らす。まったく、人見知りか。

 華ちゃんも「よろしくね」と首をかしげた。優希はすこし赤くなって、リビングに引っ込んだ。


「芙津希、パジャマと明日の服貸したって」


 この家で華ちゃんサイズなんは芙津希だ。あたしと皐希は割と背が高いから。


「あ、いや、大丈夫ですよ私買ってきます」


 そっちのデパートで、とワタワタと華ちゃんは言う。


「忘れてました、すみません」

「謝ることやないで」

「せやせや、ねーちゃん……充希に引っ張られてきたんやろ」


 ウチのマンションは駅やらデパートやらに連結してる。まぁほんまは親戚の家なんやけど。そこを格安で借りてる。

 持つべきものはお金持ちな親戚やな。ふっふ。


「あかんあかん、余計な出費はあかん」


 あたしが言うと、妹たちも同意した。


「せやせや」


 いくらお嬢様でも、中学生や。そんなお金は使わせられへん。


「でも」

「ええやん。なぁ芙津希」

「むしろ着て欲しいわ。試着しよ試着」

「せやね色々着せよ」


 あんまりにも可愛い華ちゃんを目の前にして、妹が欲しかった皐希は特にやけど、芙津希も眼の色が変わっている。着せ替えして遊びたいみたいや。分かる。お人形さんみたいやもんな。華ちゃんはびっくりしてる。ふふふ。

 華ちゃんが芙津希の部屋に引きずられて行っている間に、あたしは着替えて、それから芙津希の部屋に肌着のセットを持っていった。

 ジムとか行った時用に買ってた予備の、未開封やつ。カップ付きキャミとショーツのセット、少々サイズ違ってもなんとかなるやろ。


「華ちゃん、これ」

「かーわーいーいー」

「次これ着よ、これ」


 華ちゃんは戸惑いつつも、この2人になんとなく慣れてきているみたいで……、つまり抵抗しても無駄だと分かったみたいで、なすがままになっていた。


「あ、充希。それあかんで多分」


 あたしが持ってたセットを見て、皐希が言う。


「え、なんでや」

「見てやこれ見て」


 華ちゃんはする、っと着せられていたフリフリのミニワンピースを脱がされる。もうどうにでもしてくれって顔をしていた。ふふふ。


「あら」

「Mやとあかん」

「え、大丈夫ですよ」


 不思議そうな華ちゃん。やけどそのお胸でMはキツイと思うで。入るのは入るやろうけど。

 つか、肌、白ー。きれー。思わず見とれてしまう。


「充希、見過ぎ」

「あ、ごめん」


 華ちゃんは少し、というか結構複雑そうなカオをしていた。


「華ちゃん?」

「え、あ、すみません」


 困った顔で、華ちゃんは笑った。その顔で、ピンとくる。


「あー、ごめんな? ほんま悪気はなかってん。……揶揄われたりすんねやろ? 胸」

「えへへ」


 その表情のまま、華ちゃんは笑う。


「ちょっと、なんていうか、コンプレックスで。男子に色々言われたりして」

「気にしたらあかんで? ごめんな、お肌キレーやって見てしもーた」

「え、あ、肌? わ、すみません」


 勘違いだぁ、と照れる華ちゃんの頭をぐしぐしとかき混ぜた。


「わぁあ!?」

「ほんまにごめんな?」

「え、あ、全然」


 大丈夫です、と華ちゃんは手を振る。うーん。


「これくらいの時の男子ってほんまアホしかおらんからな」

「せやせや」

「困るよな」


 三姉妹で華ちゃんを囲む。ぎゅうぎゅう抱きしめちゃう。華ちゃんは「わぁ!?」とびっくりしてるけど、嫌な感じではなさそう。よしよし。


「瑛には何も言われてへん?」

「やなこと言うたら言いつけてや、殴るから」

「しばくから」

「どつくから」


 きょとん、とあたしたちを眺めた華ちゃんは、思わず、って感じで吹き出した後、少し赤くなって笑った。


「アキラくんは、その、……そんなことないです」


 優しいです、って首をかしげる華ちゃんに、あたしたちは「お?」ってなる。

 ちょっとは脈、あるんちゃうの瑛?


「つうか、ブラ買いに行こか。一緒行こ?」


 華ちゃんはまた少し申し訳なさそうに眉を下げた。


「華ちゃんな、あたしが誘ってんから、気にせんといて」

「せやで、充希さあ、強引やったやろ? 半分誘拐やでこんなん」


 皐希が笑いながら言う。


「着せ替え人形にしちゃってたアンタらに言われたくないねんけどなぁ」

「それもそやな!」


 あはは、と笑うと、華ちゃんも楽しげに笑ってくれたから、うん、なんかいい感じ、ってあたしは思う。

 さてさて、我が弟はどんな反応するんかな。


(めっちゃ楽しみ)


 こっそりとあたしはほくそ笑んだ。

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