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セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する  作者: にしのムラサキ
【分岐】山ノ内瑛
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悪役令嬢はカピバラに似ている?


 ここの水族館はふれあいスペースがあって、私のテンションはちょっと上がってしまう。いやかなり、かも。


「カピバラ!?」


 水族館なのに!? でもかーわいーい!


「なんか可愛いよな」

「うん」

「ちょっと華に似てるわ」


 にこにこと、悪気なさそうな顔でアキラくんはカピバラを見ている。


「……!?」


 わ、私、本格的に怪しくなってきたぞ、悪役令嬢顔面スペック。


(中身が中身だから、外見にも影響を及ぼし始めた……!?)


 ちょっとショックを受けつつも、可愛らしく餌を食むカピバラを見ているとホンワカした気分になってくる。


「かわいー、癒される」

「癒されるて、なんか疲れてんの」


 私を見てるアキラくんに、まぁ、ほんの少しだけの意趣返し? いやまぁ、似てていいんだけどさっ、カピバラ!


「疲れてるっていうか〜」


 私はうふふ、と笑う。


(ちょっとからかってみようかな、なんて)


「アキラくんにはカピバラに似てるとか言われちゃうし?」

「は!?」


 慌てたように、アキラくんはわたわたと右手を振る。左手は、相変わらず私とつないでいてくれてるから。


「いや、ちゃうねん! 雰囲気が! このなんかホワホワした雰囲気がやな!」

「いーの。どうせ私はネズミ目テンジクネズミ科」


 看板を見つつそう答えてみる。


「ほんまにちゃうねん~、可愛らしいいう意味やん、ほんまに」

「あは」


 思わず吹き出す。そんな必死にフォローしなくても。

 肩を揺らして笑っていると、アキラくんは力が抜けたような声で言った。


「なんやぁ、からかったんかいな」

「うん」

「やっぱこうしたる、こうや!」


 アキラくんはまたもや私の髪に手を突っ込んで、思いっきりかき回す。


「あはは、やめてよ」

「その上にこうや」


 ほっぺたを軽くつねられる。びよーん、って。


「ひゃめてよう」

「こんなしても可愛いんやから反則やで」

「あは」


 まぁカピバラだからね。美人的可愛さは私には求められてないんだろうなぁ。いいけど。悪役令嬢顔面スペックが勿体ない気もするけど、中身が中身だからなぁ。

 笑いあいながらカピバラから離れて、また水槽の間を歩いていると。


「あ、コーチさん」

「ほんまや」


 のんびりしている奥さんとコーチ、コーチに抱っこされたまま寝ちゃったお子さん。


「いいよねぇ、ああいうの。憧れちゃうなぁ」


 髪をなんとなく整えつつ、呟く。


(中学女子が憧れるには早いかな?)


 どうなんだろう。

 ちらりとアキラくんを見上げると、あまり見たことのない表情をしていた。


(? どうしたのかな)


「……俺なぁ」


 ぽつり、と口を開くアキラくん。


「うん? どうかした?」


 私は急に自信なさげな口調になったアキラくんに、そう返事をした。


「おとんがな、あんま家おらんねん」

「? そうなの?」

「仕事めっちゃ忙しくてな、まぁおかんも姉ちゃんらも弟もおるし、寂しいなんか思ったことないねんけど。休みの日大体ずっとバスケしとるし」

「うん」

「やから……俺、将来結婚して子供できても多分、どう接したらええか分からん」

「そっかぁ……」

「俺のイメージの父親て、寝てるか、スーツやわ」


 少し困ったように私を見るアキラくん。

 私は首を傾げた。


「そのままのアキラくんでいいんじゃない?」

「そのまま?」

「うん、私とかと接してくれてる、素のままのアキラくん」

「素なぁ」

「うん、いいパパになれそうって思うけど」

「……ほんま?」

「うん」


 私が微笑むと、アキラくんは少し安心したように笑う。


「華にそう言ってもらえると、めっちゃ自信つくわ」

「ほんと?」


 これでも中身はアラサー、それも(残念なことに)いろんな男を見てきたからね! アキラくんには太鼓判押しちゃう!


「ちなみに、お父さん何してる人?」


 そんなに忙しいなんて。ええと、公務員とか言ってたよね。


「あー、おとんは公務員」


 やっばりそんな答えだった。


「公務員なのに?」


 イメージ的には定時退社、って感じだけど。


「いっそがしい時は深夜の2時退勤とからしいわ。朝はフツーに出勤してく」

「嘘でしょ」


 私なら睡眠不足で死んじゃう……!


「えと、ごめん、公務員って……差し障りなければ」

「ああ、すまん、差し障りなんかないねん。検事してるわおとん」

「検事」

「刑事ちゃうで、検察のほう」

「うわー」


 お、お忙しそう……!


「でもカッコいいお仕事だよね?」

「よう分からんわ」


 アキラくんは肩をすくめた。

 それを合図にしたように、私たちは大きな水槽の前のベンチに座る。

 ぼう、っと水槽の青を眺めた。

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