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セカンド彼女になりがちアラサー、悪役令嬢に転生する  作者: にしのムラサキ
【分岐】山ノ内瑛
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関西弁少年は彼女が欲しいらしい

(なんか、ヤダなぁ)


 またもや胸がモヤリ。

 思わず眉を下げてた私に、アキラくんは小さく言った。


「あんな」

「ん?」

「華はちゃうで? 華は特別やで?」

「あは、ありがと」


 真剣な目で言ってくれるアキラくんにお礼を言う。


「アキラくんの女子あしらいが上手な訳が分かってちょっと納得」

「あしらいて」


 アキラくんは苦笑いした。


(手も抵抗なく繋いできたしなぁ)


 あったかい手。……結構大きいんだなぁ、男の子だもんな、と気がついて一人で赤くなりそうになる。


「あの、えーと。てっきり女の子とお付き合いとか、たくさんしてるのかと、みたいな」

「は」


 アキラくんは呆然と私を見つめた。


「ないで、俺。女子と手ぇ繋ぐんも、今、幼稚園以来やし。マジで」

「え、あ、そうなの? あ、そっか。部活忙しいもんね」


 彼女なんか、作る暇ないかー。


「……や、彼女、は。欲しいけど」

「彼女欲しいんだ?」


 何やら照れてるアキラくんが可愛らしくて、つい悪戯っぽく笑う。笑いながらも、やっぱり心はモヤモヤ。


(誰のこと考えてるんだろ)


 なんとなく、気になるのは。


「当たり前やん、好きな子と付き合いたい思うんは普通やろ?」

「同じクラスの子、とか?」


 アキラくんは少し笑った。


「気付いとらんのは奇跡やで」

「うっそヒントあった?」


 今の会話に!? あった!?


「自信無くすわ」

「えっ」


 私はアキラくんに向き合って目を見る。


「自信持っていいとおもう!」

「そういうとこやで華」


 言いながら、アキラくんはサラリと私の髪に触れた。


「なに?」

「とりあえず頑張るいうことや」


 髪に優しく触れてた手を、私の頭に乗せて、髪をぐちゃぐちゃにする。


「ぎゃーー」

「華なんかブサイクになってまえ、そしたら」

「うう、なぁに?」

「そしたら、俺以外に華のこと、」

「あれ山ノ内」


 後ろから声をかけられて、振り向く。

 40代手前くらいの背が高い男の人が、2歳くらいの子を抱っこして立っていた。


「うげ、コーチ」

「何してんだ、お前。騒がしいなぁ。つか女子の頭ぐちゃぐちゃにすんな」

「なんでいるんすか」

「家族サービス」

「山ノ内くんこんにちは、デート?」


 コーチの後ろから、女の人も歩いてくる。お腹が大きい。奥さんだろう。


「あ、うっす。てかだいぶ大きくなったっすね」

「もう産まれてもいいんだけどね~」


 そう言って奥さんはお腹を撫でた。それから私を見て「こんにちは」と笑ってくれた。


「こんにちは」


 私もぺこりと頭を下げて言う。


「つうか、デートか。いいなぁ名門青百合は、練習も休みかぁ?」

「や、今日はたまたま。ほんまにあそこ練習キツイっすよ!?」

「ほんまかなぁ〜」


 コーチさんは、ニヤニヤとアキラくんを眺める。アキラくんはため息をつきながら「小学校ときの、ミニバスのコーチ」と紹介してくれた。


「しかしなぁ」


 意味深にコーチはアキラくんを見た。


「こないだ試合観に行ったよ、お前の」

「あ、マジすか」

「うん。まぁ、まーまー、上手くなってんじゃないの」


 コーチさんの言葉に、アキラくんは少し嬉しそうに笑う。


「まぁ俺が驚いたのは別のとこ」

「え、なんでっすか」

「お前があれくらいになんのは想定済み。もっと出来るからお前」


 言われた言葉に、今度こそアキラくんは嬉しそうに頬を赤くした。それから首をかしげる。


「ほな別のとこって?」

「女の子達に騒がれても何されてもキツイ反応もせず、ひたすら笑って穏便に済ませてた山ノ内が、何でもキッパリ断るようになってた原因はもしやこの子かな〜」


 コーチさんは、私をゆっくり指差した。


「キッパリ断る?」


 私はつい首を傾げる。


「そーそー。前は付き合って~とか言われてもそのうちな、みたいな感じでスカしてたのに、こないだは無理! の一点張りで」

「そらそでしょ。好きちゃうやつにキャーキャー言われても嬉しいタイプちゃいますやん、俺」

「他のやつにお前殺されるぞ、しかもそれがクールでいいとか言われてるじゃん」


 コーチは呆れたように笑った。


(アキラくん、やっぱり。何があったか分からないけど……ゲームでの性格とちょっと変わってきてる?)


 まぁ、高校生で急にチャラくなる、とかでなければ、そうだ。

 だとすれば、それはいいことなのかな。悪いことじゃなさそうではあるけど。


(嫌なことは嫌ってハッキリ言わなきゃね)


「ま、あんまハメ外さんようにな」


 コーチたちは手を振りながら先に進んでいく。抱っこされてた2歳くらいの子が、にこっと笑って手を振ってくれた。


(か、可愛い~っ)


 つい頰が緩んで、にやにやと締まりのない顔で手を振り返す。


「華、子供好きなん?」

「すっごい好き」


 前世では甥っ子とよく遊んだ。友達の子供とかとも。


(みんな元気に成長してるかしら……)


 なんとなく、遠く前世へ想いを馳せたりしてみた。

 水族園の、仄暗い雰囲気がそんな気分にさせたのかもしれないなぁと思う。


(でも、前みたいに暗くならないのは)


 ぎゅう、と繋いでくれてる、アキラくんの手。


(この手があるから、かもしれない)


 そんな風に、思うのだった。

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