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大人たちは共謀する【三人称視点】

「ちょっと敦子しっかりしてよ」

「もー、ヤダあたしこういうの向いてないんですって静子先輩」


 天井までの大きなガラス張りで、日本庭園を見渡すことができる喫茶室。敦子と静子、2人の女性は向かい合って座っていた。


「あんたが"出来るだけ自然な出会いにしてあげたい"とか言うからでしょ、私まで笑いそうになったわよ」

「でもなかなかの演技力でしたでしょ」

「もー、カンのいい子ならバレバレよ、アンタ棒読み! そういえば学園祭の劇も酷かったー、あれなんだっけ」

「トスカ。高校生にアレさせるほうが間違ってるんですよ、もう~、半世紀前の話やめて」


 敦子は耳を塞ぐフリをして、笑った。


「やめてまだ半世紀経ってない」


 静子は口を尖らせる。


「そうですね、ギリギリ、特に先輩はギリギリ……ちょっと、やめて暴力反対……って、華は大丈夫。自分に関しては、かなり察しが悪いわよ、なんていうのか」

「あ、鈍感なのね要は」

「はっきり言わないでちょうだい……」

「ふふ、じゃあ樹は相当頑張らなきゃ、ね」

「というと?」


 敦子は首を傾げた。


「もうアレは一目惚れね」

「あらー。青春」

「お茶会中もソワソワよ」

「まぁ、華は可愛いからね」

「あらま祖母バカ」

「いいじゃない……」

「ホラ、ハンカチ」

「ありがと」

「泣くことないじゃない」

「でも、あたし、おばあちゃん、できるなんて、おもってなくて」

「うんうん」

「今日の、お着物、あたしのなんだけど、エミも、着てて」

「うん、覚えてる」

「それでね、それで……ごめん、何て言ったらいいか分からない」

「いいのよ……あら、ほら、見て」


 静子が窓ガラスの向こうを指差す。


「なに? あら、なかなかいい雰囲気じゃない」

「樹が初対面の女の子に笑いかけるなんて初めて見た」

「あらそうなの」

「というか、そもそもあんま笑わない子なんだけど」

「しっかりしてるもんね」

「そうなんだけど、もう少し甘えてくれてもいいんだけどね」

「そうねぇ……」

「華ちゃんになら、甘えられるかしら」

「甘えられてばかりじゃ、困りますわよ?」

「ちょっと、ウチの孫をみくびらないでちょうだい」


 静子は胸を張ってこうつづけた。


「鹿王院の男はね、惚れた女は死んでも守り通すわよ」

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