産土の指輪
月明かりに響く太鼓と笛の音色。
今夜はどこかでお祭りでもあるのか、ずいぶんと賑やかだ。
布団に潜り浅い眠りの中を彷徨っていると、次第に音は近づいて来ている。
体を動かそうとしても、金縛りにあったかの様に動かない。太鼓や笛の音は枕元まで迫っていた。
かろうじて動く目で、そっと足もとを見る。
そこには土小人たちがこなれた様子で列をなして踊っていた。
そうだ、昨日も踊っていた。不思議なことに朝になれば忘れてしまっている。
踊る人々は昨日の煌びやかな衣装を脱ぎ捨て、真っ白な装束をまとっていた。
よく見れば先頭で踊る土門の手には、真鍮で出来た王冠のようなものが掲げられている。
王冠のデザインには見覚えがあった。土門のつけていた足飾りだ。
行列は布団の周りをぐるぐると踊りながら回っている。その途中、花礫と思われる人が目覚まし時計を押して止めたのを確かに見た。
それでいつも、止まっていたのか。
土門は列の先頭で踊ると私の足先でピタッと止まった。
土門が手に持った王冠を掲げると、真鍮でできた花の蔦が土門の手から離れ、淡い光を放ちながら足の指に絡みつく。
これは夢ではないのかも知れない。
光が消えて、部屋には月明かりだけが変わらず差し込んでいる。
静かになった部屋の中で、ようやく上体を起こして辺りを確認するがすでに土小人たちの姿は見当たらない。
変わりに左足の中指には、真鍮で出来た花の紋様を象ったトゥリングが納まっていた。
「連日の踊りも夢じゃないのか」
電飾を思い出し、苦笑いが出た。
これがきっと土門の言っていた“ゲート”なのだろう。目覚まし時計をかけ直しながら思う。
次に会うとき、覚えていたら聞いてみたい。
あの服はどこで手に入れたのかを。
翌朝は無事に目覚まし時計も鳴り、八坂くんを玄関の外で待たすことにはならなかった。
夜の出来事も覚えていたので、一つ報告することが増えている。改めて身体を見るとアクセサリーだらけだと思ったが、気にしなければつけている感覚がない。
「おはようございます」
玄関から八坂くんの声が聞こえた。
「おはようございます、今開けます」
玄関を開けると大きな荷物を背負い、マウンテンバイクを持った八坂くんが立っていた。
見た目だけだと、どこの山へ行くのかと思う出で立ちである。
「すごい量の荷物ですね」
「ちょっと向こうに置かせてもらいたい物もあって。前から気になってたけど、ずっと敬語だな」
「癖なんです。慣れたら普通にお話しますから」
そんな悲しい顔されたって、今まで友だち付き合いに慣れていなかったのだ。
もっと長い目で見てもらいたい。
「それじゃ、行きましょうか」
私も自分の自転車を抱えて荷物を持つと、重さによろめきながら鏡へ向かった。
おはようございます。今日は七夕ですね。
今日も宜しくお願いします。




