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初めての町

道の舗装を頼んだときに、イメージしていたのは幅二メートルほどの砂利道だった。


しかし目の前に続くのはヨーロッパに出てきそうな石畳で、幅五メートルもありそうな道だった。


『こんな道、なかったべ』

「モグラ商会に頼んだんですが…姿が見えませんね」


モグラ商会の人たちが見当たらなかったので、敷かれた石畳の上を歩いて林の中を進む。

道の脇には伐採された針葉樹と掘り返された切り株がキッチリと積み上げられている。


しばらく直線を進むと、先の方に土埃を巻き上げながら作業をする小さな人々を見つけた。


「土門さ…」

手を振り歩み寄るが、あまり近づいた気がしない。距離が縮まらないのだ。少し小走りになった。


『近く見えたけんど、たどり着かねえべ』

「土門さーん!」


彼らに追いついたのは、さらに三十分ほど進んだ所だった。


『これはこれは、紅実子様。取りに伺いましたのに、届けて頂いてありがとうございます。ご依頼の舗装もあと少しで終わりですよ。ほら、町が見えているでしょう』


土門の言葉に辺りを見渡すと左右にずっと続いた針葉樹林はまばらに途切れ、拓けた道の先には水平線が見える。

道の少し先には茶色い屋根に白い壁の魚屋らしき店もあった。


「海だ!あれはお店かな?」

『あそこは寅次(とらじ)の魚屋ですよ』

カムナギに来て初めて見る店だ。


『ところで紅実子様その耳飾りは、“倶利伽羅”ですな。おめでとうございます』

土門は恭しく一礼した。


「これ、やっぱりそうなんですか。本から突然火が噴くし、赤い石が取れなくなるし普通ではないと思ってたんですが」

『ご不安でしたら鈴殿にお聞きなされば』

「最近見かけないし、そのうち取れるかな?と思っていたので」

ははっと軽く笑うと呆れ顔で返された。


『鈴殿はこんな呑気な(あるじ)を放って、どこへ行きなさったのか』


噂をすれば影が射す。

「なんや、ウチの話かいな」


片手に魚の入ったカゴをぶら下げた鈴が、いつの間にか横に居た。

『これは鈴殿、ご無沙汰しておりました』

「土門殿も息災で。今日はえらい気張らはったなあ。馬車道なんて人手が要ったやろ」


鈴は私たちの進んできた道に視線をやる。

『紅実子様には並々ならぬ恩がございますれば、これしきのこと』

「ま、町と繋がるとウチは行き来が便利や」

『鈴殿は町にお住まいですからね』


私はさっきから鈴の持っている買い物カゴが気になっていた。

「鈴さん、そのお魚…」

「やらへんで」

やっと町にたどり着きました。

今日も、お付き合いいただきありがとうございます。

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