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水上歩行

ご飯が炊き上がる頃には、田植えをしていた河童たちが陶器のお皿と木のスプーンを手に行列を作っていた。


いつも米を炊いていると思われる河童は慣れた手つきで、次々とご飯をよそっていく。


今日はご飯で終わりではないのだ。ご飯をお皿にもらった河童は目を輝かせながらカレー鍋の前に並んだ。

六十匹、もとい七十と少しいる河童たちに行き渡らせるために沢山つげないのが心苦しい。


それでも河童たちは少し注がれたカレーを大事そうに食べていた。


『カレーって、うんめえな』

『んだ、沢山の畑さ耕せば毎日でも食べれるだ』

『材料はなにで出来てんだ?畑さ増やすべ』


河童たちの意欲に繫がったようで何よりである。

食べ終わった河童たちはお皿とスプーンを大事そうに洗いに行った。


「そのお皿とスプーンはどこかで交換したんですか?」

『んだ、満月の夜に精霊の丘で(いち)が立つだ』

「精霊の丘?」

『河向こうの森の中だべ。オラたちの拾い物と運が良けりゃ交換してもらえんだ』


精霊の丘の市、行ってみたいが河を渡る手段がなさそうだった。


「私も行ってみたいですが、河ってどこか渡れたりしませんよね?」

『紅実子様は水の加護があるべ。橋なんざ無くとも河さ渡れるだ』

「どうやって?」


『水の上ば、立てばいいべ』


そんな予感はした。

満月の日までに水の上に立てそうなら、連れて行ってもらおう。あと二日しかないが。


河童たちは皆作業に戻り、後片付けも手伝いを断られたので手持無沙汰になった。棚田の方はあと少しで終わりそうなので、町までの道を下見しておこうと思い立った。


隣りに居た九太郎に案内を頼むと、林の中へずんずんと進んでいった。


『昔はここに、細い道があっただよ』

九太郎の指差す方を見ると、今ではけもの道のようになった道らしきものがあった。


『幸人様の頃はまだ歩きやすがったから、少し早く着いたべ』

言われてみれば、木の根はくねり大きな石や苔が進行を邪魔している。


「整備したらもっと早く着くかしら」

『んだな、歩きやすくなるだ。荷物も運びやすい』


脳裏に鶏小屋の土台になっていた石畳が浮かぶ。

困ったときのモグラ商会。

しかし二時間分の道程を整備するのは、時間と人手が要りそうだった。果たして酒瓶が何本いるのか。


それでも私には目標があった。

祖父がいれば、きっとこの状況に胸を痛めたはず。何より、ここまで関わってしまったのだから幸せになってほしい。


幸せの定義は難しくて一時保留していたが”衣食住”は最低限必要だと考えた。


したいこと、一つは見つけた。

後はどうやって仕事にも結びつけるかだった。

カムナギの国、少しずつ探検していきます。

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