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急いで部屋へ戻ると、手鏡で両耳を確認する。


鏡に映る耳たぶに、何か赤いものが見えた…血?

こわごわと触ってみると、耳たぶに真っ赤な石がピアスのように刺さっていた。

「何これ!?」


ピアスは今まで怖くてつけた事もなかった。


何が起きたのか整理がつかないが、手鏡を近づけて観察する。

どうやら裏には突き抜けておらず、石が埋まっている状態に見えた。この赤い石は何だろう。


触るとチクチクと痛かったので、そっとしておく。


手鏡を戻すと、しばらく座り込んだ。


「ぼーっとしてても仕方ないや。さっさとお風呂に入って寝よう」

急にぐったりとした疲れが襲ってくる。


五右衛門風呂に少し薪をくべて、追い焚きをする。冬ではないので、温まるのに時間はかからなかった。

身体を洗い、ゆっくりと木蓋を踏みながら湯船に浸かる。祖父がいた頃は、窓越しに会話をしたこともあった。


確かあれは真冬の頃だった。祖父の昔話はサバイバルでドラム缶のお風呂に入ったり、夏には川の水で行水したら魚に尻をかじられたとか。


考えれば考えるほど、背景はカムナギの国に見えた。川…もしかして河童の住む河に入ったのだろうか。岸に近くても、底が深くて怖いあの河に。


おじいちゃん、勇気があるな。

ふと窓の外を見れば、月が大分丸くなって来ている。明後日が満月だったか。


お風呂を上がると、蓋をずらした。五右衛門風呂は空焚きが怖いのでお湯は翌朝捨てることにしている。


居間に戻ると、例の本をこわごわと読んでいる桂兎の姿があった。

「ただいま、あれから変わりはない?」

『あれからは何も。耳、大丈夫だった?…ヒトって弱すぎるからさ、ちょっとしたことでスグ死んじゃうし』

「心配してくれて、ありがとう」

『別に心配してないからね』


この子はやっぱりツンデレだ。

「今日はなんだか疲れたから、早めに寝るね。明日はカムナギで田植えをするけど、一緒に来る?」

思いつきで桂兎を誘ってみた。


『泥の中には入らないけどね、見物くらいしてあげるよ』

心なしか嬉しそうだったので、誘ってよかった。

「じゃあまた明日。お休みなさい」


二階に上がると、布団を出して寝転がった。

もう一度、手鏡を取り出すと耳についた赤い石を見てみたがラウンドカットされたルビーのような石だった。

「目立つなぁ」

腕輪といい今まであまり縁のなかったアクセサリーだ。


ふと枕元を見ると茶色の本が置いてある。

昨日ここで読んでいたかな、記憶が曖昧だ。


しかし今日は眠気が勝って、深く考える間もなくあっという間に睡魔に負けて眠りに沈んでいった。


月が真上にのぼり、窓から月明かりが降り注ぐ。


小さな歌声が聞こえたような気がして、薄目を開けた。

月の光に照らされて小さな人々が浮かび上がり、懸命に歌を歌いながら布団の周りをぐるぐると踊り廻っている。

踊りは盆踊りに似ていた。


土小人だろうか。よく見れば知った顔も居るが、知らない顔もいる。おじさんだけではなく子どもやおばさんも居た。


皆一様に歌いながら、輪になって真剣な顔で踊っている。

頭の上にはどこかのテーマパークで見かけるような電飾のついた被り物をしていた。


身体が重く動かないので、声をかけることも出来ない。


なんだこれ。

疲れて変な夢を見ているに違いない。


寝なおそうと目を瞑れば、またたく間に気を失う。


次に目が覚めたのは、日も高く昇り痺れを切らした桂兎が起こしに来た時だった。

おはようございます。今日も宜しくお願いします。

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