おにぎりと沢庵漬け
台所の改築は昼前には殆ど終わっていた。
床は無垢材のフローリングで、新しい木の香りが漂ってくる。
窓際に運び込まれた新しいシステムキッチンは、コンロが三つに増えて使い勝手も良さそうだった。
窓枠やリビングテーブルは以前のものを少し手直しして使ったようだ。廊下に移動されていた冷蔵庫や食器棚を土小人たちが運び入れると、以前から知っていた景色のように馴染んだ。
「こんなに早く終わるなんて」
鹿島くんはやはり、いずれ建設現場に土小人を呼びたいと思っているだろう。
しかし土小人たちは早く終わったにも関わらず浮かない顔だった。
『昼飯…』
『しっ!聞こえるだろ』
若い土小人たちの会話が聞こえた。
「まだいくつか改築する予定のところがあるので、帰られる前に下見してもらえませんか?その間にお弁当を作りますから、対価の一部として持って帰って下さい」
元気のなかった土小人たちの顔が、ぱっと輝いた。
八坂くんと鹿島くんに、二階と増築予定地の下見を頼んだ。
美砂ちゃんは土門の持ってきた蜜蝋を無垢材に塗り込む仕上げに駆り出されている。
ちゃぶ台の上に置いていた炊飯器から、いい香りが漂ってきていた。冷蔵庫から、ほぐしておいた塩サケを取り出してご飯に混ぜこむ。胡麻も軽く炒ってから加えた。
ラップを使って熱々のおにぎりを握ると、焼海苔で包んでホイルに三つずつ並べる。
横にたくあんを三切れ添えて、包んでいく。
下見を終えて皆が戻る頃には、おにぎりセットが十個完成した。
「この家が完成したら、皆で宴会してお祝いしましょう」
土小人たちに対価とおにぎりセットを渡して提案した。
『酒もあるのか』
「宴会ですから」
『ぜひ参加させてもらいたいですな』
土小人たちは荷物を抱えながら、裏口を降りると深々とお辞儀をして竹やぶの中へきえていった。
「こっちのおにぎりはどうするの?」
ちゃぶ台の上に残ったおにぎりを見て、鹿島くんが尋ねる。
「まだお昼前ですし、鏡の向こうで食べませんか?」
私の提案に、三人とも頷いた。
二回目の更新が遅くなってすみません。




