下宿
「この子、どこの子?」
五右衛門風呂に行っていた美砂ちゃんが、頭をふきながら戻ってきた。
先日のことを説明する。
「えっ、それって付喪神じゃないの?」
そうだ、確か古いものが魂を得て変化すると付喪神になるんだ。
「珍しいですよね、でも薬の知識に詳しくてとても頭が良いんですよ」
あれから約束通り、あいうえお表や小学生用の漢字を余ったノートに書いて渡すと、あっという間に覚えてしまって現在は小学校高学年の漢字を練習していた。
「うわっ、誰その子」
お風呂から上がってきた鹿島くんにさっきと同じ説明を、美砂ちゃんがしてくれた。
「やっぱりこの家飽きないな。ねえ、卒業後にこの家に住んじゃダメ?」
突然の申し出に驚いたが、鹿島くんはいつもと違って真面目な様子だった。
「えっ、突然どうして」
「前から考えてたんだよね。今住んでるアパートの更新が近くてさ。学校からも微妙に遠いし、ここの方が近いくらい。いっそ紅実ちゃんが下宿屋さんでもしてくれたら入れるのに」
「そうなんですか、でも…」
下宿を始めるとしても、いきなり鹿島くんと住むというのは世間的にどう映るのか。せめて女性も一緒なら…
「ここで下宿始めるなら、私だって入るわよ」
私の考えを見透かしたみたいに美砂ちゃんが口を挟んだ。
「食事付きなら家賃高くても構わないし。こんな文化遺産みたいな家に住んで、美味しいご飯食べられるなんて環境的にも最高よ」
本気なのだろうか、でも二人が本気ならとても魅力的な話だ。
「それにさ、僕と美砂がここに住むってなったら八坂の反応が楽しみだよね」
「だよね、どんな顔するんだろ」
二人がニヤニヤと相談し始めた。
「下宿を始めるなら、俺も住む。それで、その子は?」
八坂くんはバスタオルを鹿島くんに被せると、逃げようとする美砂ちゃんを捕まえて、半乾きの髪を強引にわしわしと乾かした。
八坂くんにはお母さんみたいな一面がある。
「じゃあさ、水回りの改築が終わったら下宿に使えそうな部屋をリフォームしない?」
タオルの隙間から、いたずらっぽく笑って鹿島くんが提案した。
「本気ですか?」
戸惑う私に三人は頷いた。
もう一話更新できました。
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