思い立ったが吉日
「手作り市ですか、でも私なにも出せそうなものがなくて」
「何でも良いから!最近若い子が居なくて活気がないのよ。そっちのお兄さんも良かったら出してちょうだいな」
おばさんは畳み掛けるように話すと、さっさとレジに戻っていった。
もらったチラシを、読んでいると尾上が話しかけてきた。
「出店しますか?」
「こう言うのは出したことがなくて。皆に相談してからです」
そう言って話を切り上げると、春キャベツと絹さやとクレソンをカゴに入れてレジに並んだ。
「そう言えば、お土産は受け取っていただけましたか?」
「お土産…ああ、そうだ。特に花束に入ってた小人さんが素敵でした。素敵なお土産をありがとうございました」
「え、あ、いやあれは」
何やら慌てた様子だったが、言うだけ言って会計を終わらし足早に立ち去った。
帰り道、先ほどもらったチラシを手に考え込む。開催日は来週の日曜日なので私に声をかけたのは、よほど人が集まらないのだろう。
売り物によっては、バイトを一日するよりは収入が得られるかも知れない。何より興味があった。
手作り品ならば、何を売っても良いと書かれている。
家に着くまであれこれと考えてみたが、考えつくものはどれも今ひとつだ。
家の前につき、庭を見ると赤槌がドクダミと格闘しているところだった。
「あっ、赤槌さん。そのドクダミ使っても良いですか?」
『紅実子様、おかえりなさい。ドクダミなんて何に使うんですか?』
前にドクダミ茶を作ろうとしたが、忙しくて忘れていた。
抜かれて庭の端っこに積み上げられたドクダミを、井戸の水で丁寧に洗う。台所から野菜を干すために使っていた網を取り出して、洗ったドクダミを並べて軒先に吊した。かなりの量があったのでズラっと並ぶ姿は壮観だ。
しばらくは天気が続くから、あっという間に乾燥するだろう。
「売れるかわからないけど、元手は無料だからね」
そうだ、せっかくだからタケノコも売ろう。
来週ならまだタケノコが採れそうだ。ドクダミ茶とタケノコを売るお店。なかなか渋い絵面だった。
もう少し可愛いものも考えようと、裏山の入り口をうろうろしていると蕨やタラの芽が目に入った。
「山菜セットも売れるかな?」
どんどん店先が渋くなっていく。
そうだ、向こうの世界から何か売れるものを持ってこれないかな。出来れば可愛いもので。
上の空で玄関を上がると、トタトタと居間に入った。ちゃぶ台に紙を置き、商品になりそうなものを書き出していく。
「ドクダミ茶はあと、乾燥させて刻んで焙煎するだけ。間に合うよね」
独り言に応えるようにゴトンと音が鳴った。
音はなぜか薬棚の中から聞こえてくる。
ゴトッ。ゴトン。
「何かが、中であばれてる?」
おはようございます。今日もお読みいただき、ありがとうございます。




