系図
空は段々と夕暮れが近づいていた。
鈴さんを囲んでテーブルに着席した私と八坂くん、美砂ちゃんは長い昔話を黙って聞いていた。
鹿島くんはバイトで途中抜けたが、後で話を聞きに戻ると言っていた。
『まあ、幸人も紅実子に伝えんかったんは迷てたんや。自分も色々あったしな。それに関しては幸人のプライベートやから控えとくわ』
それは祖父の日記に書かれているだろうか。
書かれていたとしても、残っているかは分からない。
鈴さんの話をまとめると、笹木家はもともと湖の中にある小さな島で神官のような役割を持っていた。
それが祀っていた神と恋仲になり、他の神々の怒りに触れ島ごと消し去られそうになる。
祀られていた御神体は今の家の裏辺りまで飛ばされて、神官の命も風前の灯火。
愛しい人の命を守るため、神は他の神々と人の世界を後にしたが、その時すでに神官の子を宿していた。
最後の力を振り絞って次元を渡り、産まれた子を神官のもとに届けると神は大きな白い岩に姿を変えた。赤子は岩から滴る甘い水を飲んで大きくなった。そこで岩の手前に家を建て、御神体を納めて現代に至るまで隠し守って来たそうだ。
なるほど、御神体があの鏡だから鏡守りと呼ばれていたのか。
『これで分かったやろ。古い血筋を欲しがっとるだけや。あいつら見栄で生きとるからな』
鈴さんは鬱陶しそうに鼻を鳴らした。
ふと見ると美砂ちゃんはぼろぼろと泣いている。
そっとティッシュを差し出した。
「美砂ちゃ…」
横を見ると赤槌さんも声を殺して泣いている。
黙ってティッシュを差し出した。
恐る恐る八坂くんを見る。神妙な顔で何かを考えこんでいるようだった。
良かった泣いていない。
『これで大体話したで。ほな、これから用があるんや』
鈴さんは止める間もなくヒラリと机から降りると、戸の隙間から出ていった。
頭の整理が追いつかない。話を聞いたところで、狐対策には早く“倶利伽羅”を手に入れる他に思いつかなかった。
皆それぞれに考え込んで静寂が辺りを包む。
時々、赤槌の鼻をかむ音だけが響いている。
『今晩は、報酬の受取に参りました』
静寂を破ったのは、裏口を叩く音とバリトンボイスだった。
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