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堪忍袋

ファラオの様に固まっていた土小人は、顔面蒼白で震えていた。


「鈴さん、獲物というのは」

私が問いかけるより早く、土小人が動いた。

『た、助けてくれえ』


花束の中から飛び出した土小人を、鈴さんが肉球で押さえつける。


『遊んでおくれやす』

瞳がらんらんと光っている。


「鈴さん、この人と話があるんですが」

『なんや、つまらん。ウチが先に見つけたんやで』

鈴さんが手を離すとおじさんは荒い息をしながら、わたわたと正座した。


『助けてくれて、ありがとうございます。儂は赤槌(あかつち)と申します』

「モグラ商会の方ですか?以前カフェでお会いしましたよね」


赤槌は下を向いて頭をかいた。

『やっぱり見つかっていましたか。どうか尾上の若様にはご内密にお願いします』

「どうして花束の中に居たんですか?」


『儂は所謂、出稼ぎ組のひとりでして。近年仕事場の減少でこちらの世界へ出稼ぎに出る者も増えています。同郷のよしみで若旦那の店に雇い入れてもらいましたが今朝になって、見つかった罰に人間の家を偵察して来いと言われて来た次第です』


「そんな素直に話してしまって、大丈夫ですか」

あの狐にお仕置きされるのでは、と心配になった。


『儂らは嘘をつけません。若様は儂が見つかれば、事情が露見することも織り込み済みだと思います。それにササキ様は代々続くモグラ商会のお得意様ですから、若様のことをご忠告した後は本部に戻るつもりでした』

横で目を細めて見ていた鈴さんが口を挟んだ。


『土小人が嘘つけんゆうのは本当や』

「それじゃ、赤槌さんは私のせいで職を失うことになります」


まだ一度も職に就けていない自分には、再就職は簡単ではない気がした。

真面目に働いていたのに、私と目が合ったばかりに。

沸々と怒りがこみ上げてくる。


「鈴さん、“倶利伽羅”の本はどれですか?」

『怒りで自分を見失うんは良くないで。もっと冷静に考えや』

「尾上さんに早く私を諦めてほしいんです。今まで異性にモテたことはありませんでしたが、こんなに嬉しくないものだと思いませんでした!諦めてくれるなら、尼寺へだって入りたいくらいです」

『紅実子、落ち着きや』


台所に人が集まってきて、少しずつ頭が冷えてきた。大きく深呼吸する。


「鈴さん、尾上さんについて知っていること全部話して下さい」

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