花の中のファラオ
自宅に戻ると、ちょうど美砂ちゃんが鹿島くんと訪ねてきたところだった。
車に積んできてくれた精米機を男二人に運び込んで貰った。無論、精米機は屋敷の方に置くつもりだ。
「重いものをありがとうございます。こんな立派な精米機高かったのでは。ローンになってもお支払するので…」
うろたえる私に美砂ちゃんが笑った。
「じっちゃんの家で長いこと使ってた中古だし、五千円で買ったんだよ?だから、いつものご飯のお礼にプレゼントしちゃう」
「えっ、運ばせた上にプレゼントなんて。労働費も上乗せして請求して下さい」
「もう、紅実ちゃん堅いんだから。それなら今度二人でランチ行こ!奢ってくれる?」
美砂ちゃんは大きな瞳をキラキラさせながら、楽しそうに話した。そんな顔をされると何でも奢ってしまいそうになる。
「ずるーい、自腹でいいから僕も行く〜」
美砂ちゃんの真似をしながら、鹿島くんが話に乗ってきた。
「来んな。たまには二人で行きたいの」
「この前の男がいつ来るか分からないから、二人は危ない」
八坂くんが止めに入った。
「いつもお世話になってるから、ランチなら三人分奢りますよ。みんなで行きましょうか」
拗れてきたので提案してみたが八坂くんと鹿島くんに却下された上、行き先が焼肉に変わってしまった。どうして、そうなった。
家族以外で焼肉に行くのは初めてだ。
一応、さっき着いたばかりの二人にも昨日の夜から今朝にかけて起こった話を説明しておいた。
説明していると、なにか忘れているような気がしてくる。必死で記憶を辿る。
貰ったケーキ、は全部おじさん達がたいらげた。
他にも何か…そうだ。花束だ。
台所に置きっぱなしになった花束、その前に座りこみ凝視する猫の鈴さん。
「鈴さん、何しているんですか?」
「待ってんか、いま獲物見つけたところやねん」
視線の先を見ると、いつぞやカフェで見かけた小さなおじさんが花束の中でファラオの様に固まっていた。
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