おじさんとピクニック
水田の麓へ向かっていると、建築物が遠目に見えてきた。
あれから六時間も経っていないのに、土台の上に基礎は組まれログハウスの壁は半分ほど積み上がっている。
「四人で作ってた、よね」
驚きながら近付いて行くと、手前で設計図を確認していた土門がこちらに気が付いた。
『紅実子様、ご足労ありがとうございます。おや、そちらの男性は?』
「土門さんお疲れ様です。こちらは私のお友だちで、八坂くんと申します。この設計図を描いた内の一人です」
私の言葉に働いていた三人の土小人も手を止め、屋根から飛び降りてきた。
『これはこれは、初めまして。モグラ商会の土門と申します。貴方が設計図を作られた方ですか。こんな斬新な鶏小屋に携われて恐悦至極でございます。また図面を引かれる際には、私どもにお任せ下さい』
『花礫です』
『土紗です』
『礫だ』
四人の土小人たちは八坂くんの設計図に心を打たれたようだった。
挨拶を終えると、また仕事を再開させる。
「普通の設計図だけど…」
八坂くんも戸惑いながら、一枚の設計図を土門さんに渡す。
『これは!もしや砂絵に描かれた設計図の完成版でしょうか』
土門さんは八坂くんを拝み始めた。
仕事場に戻った三人も最初とは比べ物にならないスピードで駆け下りて来る。
四人の土小人たちは四方を持ち、図面を広げると時に感嘆の声を上げながら読みすすめていった。
真剣に話し合いをしていて、声かけられる雰囲気ではない。お昼ご飯を渡すタイミングを迷っていると、土門さんが私の持っていた包みに気が付いた。
『あ、もしや対価を運ばせてしまいましたか?』
「いえ、これは対価ではなく自分たちのお昼ご飯を作るついでに作ったもので…良ければ休憩の時にでも召し上がって下さい。お酒が好きそうだったのでビールも持ってきました。いただき物ですが、ケーキもありますので良ければ食後にどうぞ」
お酒とケーキは対価とするだけあって特別好物のようだった。
今度は動きすら目に見えなかった三人の土小人たちが、足もとで頬を赤らめて立っている。
なんだろう、おじさん達が可愛く見えてきた。
持ってきたピクニック用のシートを広げるとビールとラップサンドを渡す。
土小人たちは初めて見るラップサンドに驚いたものの、あっという間に平らげた。
ビールも器用に缶を開けて飲んでいる。
「ご存知かも知れないですが、フォックスグローブの人から頂いたケーキです。お好きなものをどうぞ」
箱を開けると色とりどりのケーキが十個ほど並んでいた。四人はケーキを一度見て、懐から小さな虫眼鏡を取り出した。
『…確か貰ったと』
「はい、先ほどご挨拶にいただきました。あまり甘い物は沢山食べられないので、食べていただけたらと思って」
『紅実子様は食べなくて正解ですよ。何か特別製の酒がかかっていますね。女性にしか効かないので、儂らは平気ですがね』
それを聞いて深いため息が出た。
「食べ物にまでそんな事をするなんて。尾上さんという人は酷いです」
私の愚痴がおかしかったのか四人の土小人たちは顔を見合わせ、しばらく小声で相談するとニマニマと笑いながらこちらを見た。
『紅実子様、いい事を教えて差し上げましょう』
いつもありがとうございます。




