人真似
※ホラー注意
家に戻るとまだ朝の七時前だった。
ふうっと眠気が戻ってくる。もう一度寝ようか迷ったが、いつ美砂ちゃんたちが来るか分からなかったので掛け布団を持って居間で少しだけ仮眠を取ることにした。
転がると視界の端っこに窓越しの青空が見える。
良い天気、あとで布団を干そう。目を閉じても青い空の残像が瞼の裏にのこっている。
そのまま、眠りに落ちた。
どれほど時間が経ったのか、頁をぱらりと捲る音に気がついた。目をそっと開けて音のする方向を見ると、見た事もない少年が縁側に座り浅葱色の本を読んでいる。
おかっぱ頭の少年は黒髪に藍色の瞳、染の着物を着て体育座りをしていた。
これは夢か、窓も扉も締め切っているのに人が入れるはずはない。ましてや少年が入り込んで本を読むなど。
そう考えると、また夢の中へ落ちていった。
次に目が覚めたのは、玄関先からの声とノックだった。
「こんにちは」
声の主は美砂ちゃんだ。慌てて時計を見ると十時前だった。
手ぐしで髪を整えると玄関へ急ぐ。
ふと廊下で立ち止まって考えた、この声は本当に美砂ちゃんだろうか。何か違和感を感じる。
恐る恐る玄関を覗くと、玄関の磨り硝子には男の影が映っていた。
ぶわっと全身に鳥肌が立つ。
廊下に立ち尽くしていると、尚もノックと声は続いた。
『こんにちは、開けて』
恐怖で足が震える。心の中で鈴さんを呼んでみても届かないのか、どこかで寝ているのか現れない。
その時、上着のポケットにあったスマホが震えた。手先もこわばっているので、落とさないよう慎重に取り出す。
八坂くんから連絡が来ていた。
[おはようございます。お昼過ぎに伺っても良いですか?]
急いで返事を書いた。
[昨日の狐が玄関の外で美砂ちゃんの真似をしています。用事が終わったら、早めに来てくださると、嬉しいです]
返事はすぐに来た。
[今から向かいます。玄関は絶対開けないように]
また八坂くんに頼ってしまった。最初に秘密を共有してたからか、美砂ちゃんと鹿島くんより頼りやすくなっている。
頼りすぎては駄目だと反省をした。けれど、あと少しで八坂くんが来てくれる。それがこんなにも心強い。
狐が鬱陶しくてすみません。
思い立って夜中の更新してしまいました。




