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来訪者

晩ご飯は予告通りカレーになった。


なぜか六太郎と九太郎が一緒に戻ってきていた。家の畑を耕してから帰るらしい。

河童にカレーを食べさせていいのか不安だったが、九太郎は過去にも食べたことがあったらしいので考えないことにした。


美砂ちゃんと鹿島くんは中々のショックを受けたものの、驚異的な順応力を見せて河童たちと打ち解けている。


鶏を何匹飼うつもりか分からない巨大なログハウス風の鶏小屋を作るべくして、設計図を広げ真剣に話し合っている。


彼らは大学生だったはずだが、就職活動とか授業とか卒論とか大丈夫なのだろうか。

就職浪人の私が何を言っても説得力はないが。


それでも巻き込んだ手前、私には責任があるので無理はさせないように気をつけよう。


「紅実ちゃん、精米機いるんだって?中古で良ければ安く買ってこれるよ」

鶏小屋の話が一段落ついたのか、美砂ちゃんが水を向けてくれた。

「ありがとう、精米機ってどこで買っていいのかわからなかったから助かります」


「明日、学校が三限で終わるからお昼すぎには持ってくるね」

「そんな急がなくても…」

「大丈夫、車で行ったらすぐだから!」

「ありがとう、お願いします」


『紅実子様こちらの畑だすが、どこの範囲まで苗を植え付けるべか』

「うーん、植え付けたいものが色々とあるから…」


その時玄関先から声が聞こえた。

「ごめんください。夜分に失礼します」


「大丈夫。私が出てくるよ」

宅配便だろうか、判子を持って立ち上がると美砂ちゃんが判子を私から受け取ると玄関へ走っていった。


玄関から引き戸の音がして、しばし間が開いた。

何だろう、嫌な予感がする。


パッチーンと音がして美砂ちゃんの怒声がした。

「なにすんのよ!この野郎」


慌てて玄関に向かおうとすると八坂くんに腕を引き止められた。

鹿島くんが先に向かい、その後に八坂くんと続いた。二人の隙間から玄関を覗き見ると、そこには異様な光景が広がっていた。

土間には一面真紅の薔薇が散らばり、美砂ちゃんと対峙した男性がその中央に立っている。

男性には見覚えがあった。胡桃色の髪に琥珀色の瞳、貼り付けたような微笑をつくる薄い唇。


カフェ・フォックスグローブで見た店員だった。

本日中にもう一回更新予定です。

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