緑の群れ
屋敷の外へ出た所には、六太郎を初めとした河童たちが所狭しと集まっていた。
「この広さ、もはや隠し部屋じゃないよね」
「あの生き物、なに?緑色の大群が…」
美砂ちゃんと鹿島くんは、また固まった。
それを尻目に、六太郎たちに歩み寄る。
「おはようございます。こちらに運び込みたい荷物が沢山あるので、手を貸してもらえますか?」
『勿論だぁ、運ぶだよ』
開け放した扉を河童が次々とくぐっていく。
鏡の横に立ち、河童たちの出入りを手伝った。山のような荷物は人海戦術によってあっという間に運ばれていく。
屋敷の前に野菜の苗や肥料、米に大きな鍋が用意された。
「さて、石を組みましょう」
「俺がするよ」
力仕事なので八坂くんが作ってくれて助かった。
石を組み上げていくと、即席の竈が出来た。次は火をおこす。
その間に、大鍋に米を五キロ入れて腕輪を触る。
水…水…と念じてみると大鍋の上に水の珠が現れた。それはすぐに形を崩すと鍋の中に降り注ぐ。
出来た。
自分の意志で水が出せた。
しばらく感動に浸っていたが、周りの慌ただしさに我に返った。
きれいな水だったので、そのまま米を研ぎ洗う。それを数回繰り返して大鍋を即席の竈にかけた。
蓋をしたら後は火加減を見るだけだ。蓋の隙間からぶくぶくと泡が立って、米の炊ける香りが辺りに漂う。
香りに気が付いた河童たちが竈の周りに集まってきた。美砂ちゃんと鹿島くんも慣れてきたのか、ようやく動き始めた。
「すごいね、本当に河童を見られる日がくるなんて思わなかった」
美砂ちゃんは興味津々で河童を観察している。
鹿島くんは屋敷の構造に夢中だった。
「すごい、こんな所でハーフ・ティンバー構造を見られるなんて。保存状態もいいし、何よりこの独特の骨組みが…」
呟きながら屋敷の周りをうろうろとしている。
そう言えば、屋敷の部屋は最初に入った部屋と玄関に続くホールしか見ていなかった。
一階の部屋や、二階にある他の部屋はどうなっているのだろう。
日のあるうちに確認しておこう。こちらにもおじいちゃんが何かを残しているかも知れない。
忘れないうちにメモを取ると、炊き上がり蒸らしていた大鍋の蓋をとる。
真っ白な湯気とふかふかのご飯が顔を覗かせた。
評価とブクマありがとうございます。励みになります!




