カルテット
もう慣れたもので、中程にある木の棒を動かすと回転扉が開かれた。
「うわ、気が付かなかった」
「手が込んでるね。面白い構造」
美砂ちゃんと鹿島くんは興味深そうに扉の構造を見つめていた。
「うっわぁ!素敵なステンドグラス。この中だけ洋館みたい」
美砂ちゃんの興味はステンドグラスへ一直線だ。
そうだ、今日は鈴さんが居ないので私が【誓約】をかけないと。
抵抗があるが、秘密を共有するためだ。
かけ方は以前聞いていた。
「美砂ちゃん、鹿島くん。これから知ることはけして口外しないと約束して下さい。そして、ここから外に何かを持ち出すときは必ず私に相談して下さい」
「え、なに。改まって」
鹿島くんは異様な雰囲気にびっくりしたようだ。
「突然こんなこと言われたら驚きますよね。でも必要な確認なので…気を悪くされたらごめんなさい」
それ以上言葉が続かず下を向く。
「オッケー!約束するよ。紅実ちゃんは私が守るからね」
美砂ちゃんが手を取って笑ってくれた。
「僕も勝手はしない。約束する」
パチン!
軽い音を立てて【誓約】が成立した。
「びっくりした。今の静電気?」
「小指のあたりがピリッとしたよね」
無事に誓約が成立してホッとした反面、申し訳無さがある。これで、巻き込んでしまうのだ。
美砂ちゃんの手を引いて鏡の前に立つ。
「驚くなと言っても無理だと思います。でも美砂ちゃんも鹿島くんも、三人とも私が守りますから」
そう言うと美砂ちゃんの手を握り鏡を越えた。
鏡の向こうからは、ガラスのように元の世界が見える。
「え、美砂と紅実ちゃんが消えたんですけど」
鹿島くんの目が点になっていた。
美砂ちゃんをみると、こちらも点だった。
もう片方の手を鏡から出すと、八坂くんがその手を握り鹿島くんを強引に引っ張って連れてきた。
「なんだよ、ここー!!」
鹿島くんが叫ぶ。
不安になって八坂くんを見ると、私の肩を軽くたたいてから二人に話しかけた。
「ビックリするよな。ここが隠し部屋だ」
すると二人は一旦落ち着いて、辺りを見渡し始めた。
「八坂は落ち着いてるわね。前にも来たことあるんだ?」
美砂ちゃんが探るような目で八坂くんを見る。
「まあ、ちょっと強引に押し入った」
「なにそれ、ずるい。いつの間に?何でさっさと言わないのよこんな楽しそうなこと!」
八坂くんが美砂ちゃんに締め上げられた。美砂ちゃんの怪力恐るべし。
「八坂くんは、私が自分で言うのを待っててくれて。言うのが遅くなって、ごめんなさい」
今日は謝ってばかりだ、自分の情けなさが身にしみる。
美砂ちゃんと鹿島くんは、目を合わせると二人で私に向き直る。
「それは良いとして、これからは抜け駆けなしだからね」
声を揃えて言われたそれは、誓約のようだった。
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