宅急便ラッシュ
気がつけば朝だった。
昨夜は八坂くんが興味深そうに覗き込むのが楽しくて、調子に乗って野菜の頁を増やし続けた。
西瓜と南瓜を増やした辺りで軽い目眩を覚えたが、冬瓜が記載されたところから記憶が途切れていた。
また気を失ってしまった。
慣れてきていたので、油断したのだ。和ハーブ図鑑ならば八種類ほどで睡魔に負けるのに野菜図鑑は四種ほどで記憶が途切れた。
本によって限界が変わるのか。
何にせよ、今朝は宅急便ラッシュが起こっていた。
殆どの荷物は向こうの世界で使う道具だったり、炊き出し用の米だったり苗だった。
苗と肥料は近くのホームセンターへ電話したので、いつ届くか不明だったがまさかの早さだ。
ふと荷物で溢れた玄関に人影が見えた。
また荷物だろうか。
認印を持って玄関へ出ると、そこには美砂ちゃんと鹿島くんが居た。
「…おはようございます」
「おはよ!すごい荷物だね。あ、苗だ。畑に植えるの?」
まだ連絡していなかったのに、どうして。
混乱していると視界の端で八坂くんが手をひらひらと振った。連絡したのは八坂くんか!
早すぎるし、なぜ相談もなかったのか。水をかけたい衝動をなんとか抑える。
「おはよー。それで紅実ちゃんが報告したいことって?」
鹿島くんがあくびしながら尋ねた。
「はい、ここじゃ何なので中にどうぞ」
覚悟を決めて二人を招いた。
和室にはちゃぶ台を挟んで四人が座った。
「え、まさか報告したいことって」
美砂ちゃんが期待を込めた目で八坂くんと私を交互に見てくる。
八坂くんがジェスチャーでバツを送った。
うなだれる美砂ちゃん。いや、何の話を予測されたのだ。
「実はね、言えてなかったのだけど。この家には隠し部屋があるの。八坂くんにはお泊り会をした日に、たまたま出てくるところを見られて知られたんだ。隠してて、ごめんなさい」
「あー、あの日か」
「なぁんだ。それじゃ何にも進展なかっ…」
美砂ちゃんと八坂くんがまたじゃれてる。
「紅実ちゃん、教えてくれてありがとう。何かきっと言えない事情があったんだよね。大丈夫なの?」
美砂ちゃんが心配そうに聞いてくれた。
「家の人には秘密にするように言われてましたが、二人なら言いふらしたりしないと思ったので」
鈴さんはややこしいので家族枠にしておいた。
「大丈夫、僕はこう見えても約束は守るよ。それより隠し部屋ってどこにあるの?ワクワクするよね〜」
鹿島くんがはしゃいでいた。
一抹の不安が残る。
「大丈夫、後で私がちゃんとシメとくから」
鹿島くんを不安そうに見ていると、美砂ちゃんがこそっと耳打ちしてくれた。
本日も、ありがとうございました。




