新たな図鑑
図書室へ入ると、一冊の本が落ちているのに気が付いた。
八坂くんは雨合羽を着て、ガサガサともの珍しげに本を見て回っている。
「また本が落ちてる」
デジャヴだ。確か最初の和ハーブ図鑑も落ちた音で気付いた。
表紙の色から和ハーブ図鑑ではないと分かっていた。
「ここの本は、ほとんどが白紙とか書きかけばかりだけど普通の本はないの?」
八坂くんの質問に疑問を覚える。
祖父の日記も和ハーブ図鑑も書きかけと言われるほど、白紙が残ってはいない。
「書きかけの本は持ってきてもらえますか?」
「了解」
こんな時、鈴さんが居たら沢山聞きたいことがあるのに…気まぐれに訪れるので仕方ないが。
昼間【誓約】を使ったことで疲れた様子だった。
八坂くんが三冊の本を持って戻ってきた。
「ありがとう」
頁をめくる。私には相変わらずヒエログリフもどきに見えていた。
「あ、ここ」
そこには、また私の字が載っている。
この本には野菜の育て方が記されていた。載っていた野菜は河童の畑に植えるため、調べたトマト、トウモロコシ、サツマイモだった。
落ちていた本も含めると四冊が解読できるものになっている。
薬草の調合、西洋ハーブ、そして祖父の日記には続編があった。
「おじいちゃんの日記まで、文字化けしてたのか」
最初の数頁だけ祖父の字が読めるようになっていた。
これはさすがに八坂くんに見せられないな。
「どうした?」
「祖父の日記が出てきたの。中はちょっと見せられないですが…ごめんなさい」
「大丈夫、気にしない」
四冊を持って一階の和室に戻った。
「所で、この本は全部手書き?」
そう言えば頁に記す作業を、見せていない事に気が付いた。
「百聞は一見に如かず。見ててください」
何にしようか…せっかくだから河童の好物、胡瓜も調べておこう。
「胡瓜、ウリ科キュウリ属…」
いつもの通り片っ端から調べた内容を音読していく。ネットがなければこんなに簡単に知識は手に入らなかった。祖父の時代にはきっとなかっただろう。
そんなことを考えていると、茶色い表紙の本がパラパラと勝手に頁を選び書き換えを始めた。
八坂くんはとても興味深そうにそれを眺める。
「書かれていると言うよりも、文字が滲み出ている。俺も読んでみていい?」
結果を言えば、本は私の声にしか反応しなかった。
お昼に更新予定していたのに、遅くなりました。ごめんなさい。




