水が降る
「また、水が…」
ぽたぽたと滴る水に呆然としながら、空を見上げる。今回は屋内ですらない。
「大丈夫?」
八坂くんが慌ててタオルを取ってきてくれた。
「すみません、ありがとう、ございます」
これで二回目だ。一体なにが起こっているのだろう。
すると急に、八坂くんが追加のタオルを投げ付けてきた。わけが分からない。
「なんですか、こんなに使いませんよ!」
タオルを持って近づくと逃げる。
八坂くんの指差す方向に気が付き、下を見る。
なるほど、今日は白い七部袖を着ていた。
「あ、透けてましたね。お見苦しいものを…すみません」
私ごときに慌てるなんて、八坂くんはもしや私よりも初心かもしれない。少し平静を取り戻してニヤッと笑った。
とりあえずはタオルを羽織り、縁側に再び座る。
「早く着替えてきて。風邪を引く」
まだ水の滴っていた髪にタオルをかぶせると、拭きながら八坂くんが耳もとで言った。
さっきの撤回。タラシかも知れない。近い、近いから!
私の動揺が頂点に達したとき、三度目の降水は二人にかかった。
急いで五右衛門風呂を沸かし交互に入る。
手持ちのシャツの中で、一番大きなものを八坂くんに貸すことになった。身長差がそこまで大きくないので貸せて良かった。
これは、美砂ちゃんに見られたら何を言われるか分からない状況だ。
「さっきの、もしかして動揺が原因?」
言い当てられたくない原因をサラリと当てられた。また動揺しそうだ。
庭で傘をさしながら八坂くんが尋ねた。
「紅実ちゃんが過去に付き合った人って」
ざばっ。
四回目の水が降ってきた。
「大体わかった。その腕輪だと思う」
そう言われてみれば、お泊り会の夜は動揺することが多かったのに水が降らなかった。
腕輪が抜けなくなったのは、その後だ。
「あ、でも気になってた。紅実ちゃんの彼氏って本当に…」
ざばっ。
遊ばれている気がしてならない。
「そんな事はどうでも良いですから。これ、コントロール出来ないと困ります」
「確かに室内で降られたら、掃除が面倒くさい」
方向性がズレている。
「本棚を確認しに行きますから、動揺するような事はしないで下さいよ」
念の為、釘を刺すが天然なので分かっていないだろう。
「そう言えば最初に水が降ったときは、何に動揺した?」
ざばっ。
八坂くんはかろうじて、傘をさしていた。
本日もお読みいただき、ありがとうございます。
物語はのんびりペースで進んでいます。
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