俵の消費期限
六太郎が手に持っていたのは、卵焼きだった。どうやら一つずつ試食したらしい。
『こんな美味えもんは食べたことねえ。米という植物もこんなに美味いもんだと知らねかった』
「米は祖父のいる間、毎年作っていたのではないですか?」
『作ったが、どうやったら食べられんのか分からんでよぉ』
祖父は一体なにを教えていたんだ。
『倉庫にあるべ。食べ方教えてけろ』
「分かりました。まずはどんな状態か見せてもらえますか?」
倉庫は棚田から少し離れた斜面にびっしりと建っていた。
きちんと高床式だったので、早々カビたり鼠にやられたりしてはいないと思う。
六太郎は梯子をすいすいと上ると、見覚えのある丸い物を抱えて下りてきた。
あの丸いものは俵。中を確認すると玄米だった。これなら、精米すれば食べられるかも。試しに少量持って帰って精米してみようか。
『あんの、黄金色の食べ物さ作れるだか』
「あ、こちらは少し時間がかかりますが、作れますよ」
卵焼きは、卵とマヨネーズとツナ缶、ミックスベジタブル、全部作るのは難しい。特にツナ缶。
でも卵なら、鶏を飼えば手に入る。
「八坂くん、鶏小屋って建てられる?」
無茶振りだと思いつつ、経緯を説明した。
八坂くんはおにぎりを食べながら頷いた。
口の中のものを飲み込むと、地面に枝で簡単な図面を描き始めた。
「この世界の生態系がどうなっているのか、分からないけど。普通はこうやって天敵の蛇やイタチが入らないように作る」
すごい、何でも知ってる。
「河童たちが何でもするって言うなら、木材の調達をお願いしたらいいと思う」
「他には何が要りますか?」
「ブロックと金網は手に入りにくいだろうから、後は工具も持ち込みかな」
忘れないうちにメモを取る。
「そうだ、鶏はどこで買うの?」
そうだった。
六太郎はオロオロと、少し離れたところで待機していた。
『面倒ごと頼んじまっただか』
「大丈夫ですよ。まずお米の苗、植えながら説明しますが童河童くんたちが遊びながら潰さないように気を付けて下さい。それから木材を集めて欲しいのですがお願いできますか?」
『それくらい、お安い御用だべ!』
出来ることがあったので、六太郎の顔はぱっと輝いた。
『木材たくさん探してくるだ』
そう言い残すと、六太郎と九太郎は林の中へ走っていった。
「木材は屋敷の前に置いてねー!」
後ろ姿に叫んだが、聞こえただろうか。
そうだ、あとは鶏だ。これには一つやってみたい事があった。
それともう一つの決心も出来た。
「八坂くん、相談したいことがあるの。今夜泊まっていけるかな?」
夜にもう一話更新予定です。




