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小さな幻覚

「小さい、おじさん」

ぽつりと言葉がこぼれた。


頭と首に手ぬぐいを巻いたその人は、サイズさえ違わなければ紛れもなく農家のおじさんといった風貌だった。


おじさんはこちらの視線に気がつくと、バードテーブルからぴょんっと飛び降り花壇の中に紛れてしまった。


きっと昨日の睡眠不足から、幻覚でもみたのだ。

そう結論づけた時に、料理が到着した。


食事の時間は楽しかった。


美砂ちゃんによれば、予想より安くガスコンロやシンクなどが買えたので、念願だったユニットバスも鹿島くんが取り置いてくれたと聞いた。


ユニットバスの値段を足すと、若干予算を超えるが仕方がない。

後は増築の許可さえ取れれば、冬の寒空や大雨の日に外へ行かなくて済むようになる。


キッチンとトイレの改築の日程も決まって、家が快適になっていくのが嬉しかった。

それと同時に、改築が終われば三人と会う理由がなくなってしまうのが寂しくもある。


話すべきか否か。

今まで親しい友達と呼べる人などいなかった。

上辺だけで会話しては、知らずに自分から一線を引いていたのかもしれない。


親や周囲の目を気にして流されてばかりだった自分。

なぜ、八坂くんや美砂ちゃんがこんな私に親切にしてくれるのか分からない。

もしかしたら、私のことを友達だと思ってくれるのだろうか。

おこがましくも、そんな考えが頭の中をぐるぐると回った。



食後には紅茶とシフォンケーキがついている。

特にシフォンケーキの美味しさには感動したので、オーブンを手に入れたら特訓する決意をした。


一段落した所でスマートに支払うため、お手洗いへ立つフリをしてレジへ行く。

ところが八坂くんに先回りされていた。

「あの、お会計は」

「終わってる」

「ここは私が…」


言いかけると鹿島くんが横から出てきた。

「いつも食べさせてもらってるから、三人で割り勘にしたよ」


「ちなみに八坂が多めに出したいっ…て…いったーい!」


私が呆然としていると、八坂くんと美砂ちゃんの攻防戦が始まっていた。



帰宅すると修理後、初めてとなる五右衛門風呂を沸かすことになった。一人ずつ入り、交代で薪をくべていく。

美砂ちゃんが一緒に入りたがったが、狭くて二人は入れないこと、踏み板以外に触れたら火傷することを理由に丁重に断った。

涙目で見つめられたので、ユニットバスが出来たら一緒に入ると言うと目が光った気がしたが、気のせいだと思っておく。


お昼に食べすぎたので、夕食は軽く済ませることにした。

三人を見送るとふらふらと二階へと上がり、実家から持ってきた布団に倒れ込む。


昼間に干してあった布団の寝心地と昨夜の寝不足も手伝って、あっという間に眠りへ落ちていった。

今日も一日、お付き合いありがとうございます。

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