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フォックスグローブ

湖岸沿いを車で走ると目印の看板と、白樺の林を見つけた。



「ふーん、カフェ・フォックスグローブね。行ったことはないけど、口コミ見てたらよく出てるよ」

運転しながら鹿島くんが目的地について話す。


駐車場から店へ続く小径(こみち)には、五月の花々が彩りを添えていた。


美砂ちゃんが小径の途中でくるり、とガーデンを見渡す。

「イングリッシュガーデンかな?最近流行ってるよね。お店の外観にも合ってるし、手入れもきちんとされててキレイ」

「確かにこんなお庭があったら、一日過ごせそう」


お店の戸を引くと、軽やかにドアベルが鳴った。


「いらっしゃいませ」

お店のカウンターに立っていたのは、胡桃色の髪に琥珀色の瞳、薄い口元には笑顔を貼り付けた二十代後半に見える男だった。


案内された窓際の席に腰掛けると、先ほどの男性がメニューを差し出した。

「ごゆっくりどうぞ」

男性はにっこりと会釈して席を後にした。

美砂ちゃんは頬を赤らめて会釈を返したが、あの笑顔が取ってつけたように見えて警戒してしまう。社交能力が欠如してるからだと言われれば、それまでだが。


「どれも美味しそう!紅実ちゃんはどれにする?本日のおすすめなら、一通り食べられるみたいだね。食後にデザートも付いててお得だよ」

美砂ちゃんからメニューを受け取ると、コースを眺めた。

癖のある右上がりの字で、細かにメニューが書かれていた。

「じゃあ、本日のおすすめにする」

値段も良心的だったので、四人分でもギリギリ払えそうだった。いつも私のご飯で我慢させているので、たまには年上としてご馳走するくらいの懐の深さは必要だろう。

早々にメニューを決めると、窓の外へ視線をうつした。

お世辞にも広い庭とは言えないが、手入れが行き届き薔薇と宿根草がメインの庭。

中央には芝生が青々と広がっていた。

端っこにはバードテーブルが置いてあり、野鳥が食事に訪れる。

「…素敵だなぁ」


ぼんやりと庭園に癒やされていると、バードテーブルで何やら丸っこい生き物が動いている。

リスだろうか。


目を凝らすと、体長十センチほどのおじさんがバードテーブルに鳥餌の補給をしているところだった。

本日中にもう一話更新予定です。

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