偽りの恋
お風呂あがりにはフルーツ牛乳、と思っていたがいつの間にか瓶入りではなくなっていた。
「あたしはコーヒー牛乳派」
美砂ちゃんは腰に手を当てて、一気に飲み干す。
着替え終わって外へ出ると、空はすっかり暗くなっていた。
帰宅途中スーパーへ寄ってもらって、夕飯の材料を買い足す。昨日の宴会で殆どの食材を使い切ってしまったのだ。
今日はよく働いたので夕飯は中華と決めていた。
牛肉、は高いので鶏か豚で。
帰宅すると十八時前だったので、急いで支度する。
鶏胸肉を代わりに使った酢豚ならぬ、酢鶏と茄子の中華味噌炒め、麻婆豆腐と土鍋で炊いたご飯だ。
お腹が減っていたのか、濃い味のものばかり作ってしまった。反省。
ご飯が進んでしまうメニューなので、白ご飯は多めに炊いておいた。余ればおにぎりにして明日の朝食に足せばいい。
人手が多かったので、あっという間に料理が完成した。
「いただきます!」
鶏胸肉が安かったので、多めに作っておいた酢豚風はあっという間に完食された。食べ盛りの食事量はすごい。
夕食のあとは二階の一番広い和室で、寝袋を用意しながら明日以降の改修工事についての相談だ。
トイレは出来れば一日で仕上げたいので、材料を先に揃えることにした。
話が進むうちに、脱線していくのは若さか。
いつしか話は、女子トークならぬ恋話へと移行していた。積極的に参加しているのは鹿島くんと美砂ちゃんだけだが。
「大体いつも、思ってたのと違うって振られるの。って、告ってきたのはそっちだろー!」
誰だ、またお酒を持ち込んだのは。
「僕も!もっと軽く遊べるかと思った〜って振られるんですよ。あ、告白するのは僕からですけど」
鹿島くんも苦労してそうだ。告白するのは勇気がいるし、バイタリティに頭が下がる。
「紅実ちゃんは、彼氏とかいるの?」
美砂ちゃんが剛速球をこっちに投げてきた。
取れないから、大怪我するから。
「えっと、彼氏とかあんまりハッキリしたものは…」
適当に濁す。あんまり話したくないです、との逃げ口上だ。
美砂ちゃんが追い打ちをかけてきた。
「初めて付き合ったのはいつ?」
逃げるのに失敗した。頭の中はパニックだ。
「よ、幼稚園?」
仲の良かった男の子と、おうちごっこでお父さんとお母さんを演った。くみちゃんがお母さん役ね、って言われてときめいてた。
「えっ早いね!何人と付き合った?」
「お、覚えてなくて…」
むしろ覚えがなくて。
矛先が向かないからか、八坂くんの顔が能面になっていた。
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