祖父の畑
「いい買い物をしたね!」
薬棚を見るなり、美砂ちゃんの目がきらっと光った。
家に帰ったら一階の和室で、買った品物のお披露目会が始まった。
この薬棚は一階の和室に置くことに決めていた。
その他にも箪笥や古道具を何点か、予算の範囲内で買う事ができた。
午後からは切り替えて五右衛門風呂のDIYだ。
「お昼ご飯は早くできるので、冷やしうどんで良いですか?」
出発前には河童騒動もあって、ご飯の支度を忘れていた。
これからご飯を炊いていたら作業する時間がなくなってしまう。
「大丈夫だよ!むしろ買い物付き合わせたのに、帰ってからご飯作らせてごめんね」
「いえ、私の買い物の方が場所取ってしまっていました」
美砂ちゃんがお昼ご飯を買ってくると言うのを、慌てて止めた。
食事はきちんと作らなければ、甘えっぱなしになってしまう。
運んできた段ボールの中を探すと稲庭うどんの乾麺があった。
大きな鍋にお湯を沸かす間に、横の小さい鍋でキャベツの葉を茹でて千切りにする。昨日の残り物の金平ごぼうも出して、錦糸卵も作った。
ネギはおじいちゃんの畑に生えていた気がする。
おじいちゃんが亡くなってから、放ったらかしていたので勝手に育っていた。
小さなカゴを持って裏口から出ていく。畑は中庭の生け垣を抜けてすぐにあった。
「まだ小さいけど、少しだけもらおう」
ここの畑にも、また何かを作ろうかな。
雑草の増えた畑を見ながら、少し考える。
「わっ畑もあるんだ!何か植わってるの?」
鹿島くんと八坂くんが後をついてきた。
「あれ?美砂ちゃんは…」
「鍋の監視に置いてきた」
沸かしてるだけだから、放っておいてもよかったのだが。
「僕、カボチャとか植えたいな。シンデレラの馬車なんちゃって」
「それはルージュ・ヴィ・デタンプですね。別名シンデレラ・パンプキンと言って日本ではあまり手に入らない品種ですけど」
「へえ、紅実ちゃん野菜も詳しいんだ」
「祖父の受け売りです。祖父が元気だった頃はこの畑で、一年を通して野菜を育てていましたから。私も遊びに来たとき、手伝っていました」
荒れた畑を見渡しながら、在りし日の姿を思い出す。
「少ないですけど、ネギも採れたので戻りましょうか」
茹でた麺を笊にあけ、冷たい水で締める。
つゆは冷まして常温にして、茹でキャベツの千切りと金平ごぼう、錦糸卵とネギをのせて頂く。
「あっ、紅白なますを忘れちゃった」
慌てていたからか作り忘れたことを思いだした。
「じゅうぶんだよ!美味しそう、早く食べよう」
「うん、お待たせしました。お召し上がり下さい」
みんな手を合わせると、次々とお代わりをした。
麺は六人前茹でたが、足りるだろうか。
本日も、ありがとうございます。




