カエルの歌が
翌朝、一階の和室には土下座した鹿島くんと、仁王立ちした般若顔の美砂ちゃんがいたので見なかった事にした。
永島先生は仕事が残っていたらしく、今朝早くトラックに乗って大学へ出勤した。
美砂ちゃんは八坂くんから連絡を貰うなり、最短ルートで飛んできたらしい。
「どういうこと?なんで私に一言も断り無く、酒呑んで泊まってんの?」
「…まことに申し訳ございません」
「謝れば済むと思ってるんだ」
さっきから十回以上は同じやり取りを繰り返している。
お酒を勧めたのは、私の大叔母なので良心の呵責があるが、あの空間に割って入る勇気はない。
「あっ紅実ちゃん、おはよ!昨日は大変だったでしょ。今日の骨董市、鹿島が荷物持ちしたいっていうから一緒でもいいかな?」
「おはようございます。私は構わないけど…」
一転して天使の笑顔を浮かべる美砂ちゃんだった。
鹿島くんは一旦車を取りに戻ったので、美砂ちゃんと八坂くんが家に残った。
二人はノートパソコンの前で会議をしていた。
「お風呂が完成したら、次はトイレとキッチンだよね。紅実ちゃんはお料理上手だから、立派なキッチンにリフォームしたいな」
「アイランド型とか使いやすそうだ」
「窓の外の眺めが竹林っていうのも素敵よね。タイルのシンクもレトロで可愛いけど、シンクの高さを上げないと腰痛になりやすいわ。窓枠はこのままで、シンクだけ取り換えて雰囲気をあわせましょうか」
「安く買うなら良いとこ知ってる」
「私も知ってるわ。どっちが安く買えるかしら?」
八坂くんと美砂ちゃんが張り合い始めた。なかなか楽しそうだ。
会話に参加する隙間がないので、とりあえず傍観しておく。
手持ち無沙汰になっていたので、縁側を開け放して空気の入替えをした。
午前中は空気が澄んでいて気持ちがいい。
風に乗って鳥の声が聞こえてくる。
カエルの声も…ん?カエル?
ケロ〜…
ケロ〜…
風に乗って聞こえてたカエルの声は、井戸の方からだった。
本日二回目の更新です。




