お誘いメール
「お母さん、次は金曜日に向こうの家に行くから」
月曜日の朝、母に報告をする。
私は忘れっぽいので早めに言っておく。
「かまわないけど、部屋の片付けは進んでるの?向こうへ移るんだから中途半端に荷物おいて行かないでね」
「わかってるよ。でも、向こうに箪笥も棚もないんだから一気には運べないの」
「車がいるなら、免許取りなさいよ。私たちだって、いつまで運転出来るか分からないんだから。あ、そうだ。ユキおばさんがね、冷蔵庫いらない?って聞いてたわ」
「ほしい!けど、どうやって運ぶの?」
「それくらい、あなたが考えなさい。無料なんだから」
いつものコトだが、母のうまい話には罠がある。
でも冷蔵庫は魅力的だ。買えば高い。
「ちょっと調べてみるから、取りに行くの少し待ってもらえるかな」
ネットでごそごそと調べてみる。
ここでも安く済まそうとすると免許が必要になる。やっぱり免許を取ろうかな。
山の中の暮らしは、車がなければ歩くしかない。
部屋に戻ると段ボールが山積みになっている。
最近では段ボールを前にすると、なにもやる気が起きなくなっていた。
「…本の空欄でも埋めようかな」
完全に現実逃避である。
ふと、鏡の向こうにあった部屋を思い出した。
夜に行ったから真っ暗で、すぐに帰って来てしまったけど、あれは祖父の家の裏手に続いているのだろうか。
そんなに祖父の家の敷地は広くない。
あの部屋の裏手にあたる場所を考えてみたが、大きな岩があったはずだ。
鏡の向こうは岩の中に続いていた…?
思案していると、手の中にあるスマホが震えた。
「美砂ちゃんだ。…ん、土曜日の午前中?」
次の土曜日に、祖父の家の近くで骨董市があるので一緒に行かないかという誘いだった。
「可愛い箪笥があるかな」
骨董市は初めてだが、楽しみだ。
何を探すか、メモしておかなければ。
短めもあるので、あと一話本日中に更新予定です。




