ピンヒールは強し
※虫注意です。
十時を過ぎた頃、学生二人が到着して三人が揃った。
今日は学生さんたちご指導のもと、初めてのDIY。
屋根と五右衛門風呂の修理をする予定だ。
しかし、五右衛門風呂は薪とか掃除とか手間がかかるので、そのうち普通のお風呂も欲しい。
手が空いたらそれも頼もう。
一通りの段取りを聞いた後、男の子二人は屋根の修理へ。
私と美砂ちゃんは五右衛門風呂復活へチーム分けされた。
美砂ちゃんが言うには、五右衛門風呂の損傷は少ないので水漏れの確認と洗い場を直せば使えるらしい。
銭湯へ行くのも面倒なので、早く直したいところだ。
そして冬までに母屋にユニットバスも欲しい。まだ言えないけれど。
「五右衛門風呂が直ったら、入らせてほしいな」
「良いですよ。早く使えるように頑張ります」
「嬉し〜!紅実ちゃんも一緒に入ろうね」
「風呂釜が狭いので、私が一緒だと大変だと思います」
まだ諦めてなかったのか。
祖父と二人で入っていた頃も、私は五歳くらいだったが窮屈だった思い出がある。
「五右衛門風呂の図案を描いてきたんで見てもらえる?折角だから、洗い場と脱衣所は使いやすくしたくて」
そう言ってノートパソコンを開いて見せてくれた。
さすがに建築科の学生さん、綺麗に線やら記号やら数字が書き込まれているが私が見ても完成図がさっぱり浮かばない。
「あっ、これ見ても分からないよね。立体図まで作る時間がなくて。お風呂のところで説明した方が早いかな」
てへっと美砂ちゃんが笑う。うん、今日も可愛い。
むしろこの図面を一晩で描いたのに、脱帽する。
二人で裏口から五右衛門風呂のある離れに向かう。
昔はトイレも離れにあったが、不便すぎて前回の改築のときに母屋へ移動したらしい。
お風呂は祖父のこだわりで、五右衛門風呂のままだったとか。
「えっと、ここの脱衣所の段差なんだけど…」
美砂ちゃんが身振り手振りを交えて説明をする。
ボロボロの戸を取り外して、床の抜けた脱衣所の中をのぞき説明を受けた。
「あっ、きゃ!またムカデだ」
ダダンッ
瞬く間に美砂ちゃんの足元でピンヒールが踏み鳴らされ、ムカデが残骸になって転がった。ピンヒール強し。
ムカデから目を逸らすと同時、音に驚いたのか緑色のなにかが五右衛門風呂の後ろから竹藪の方へ走り抜けていった。
いつも、ありがとうございます。




