月明かりに猫
※祖父の家、間取りに加筆しました。最後に画像があります。
「こんな所に扉があったんだ」
一見して壁と見間違う板戸だが、この奥には部屋があると確信があった。
空っぽになった本棚は思いのほか、すんなりと動かせる。
「この辺だったはず」
板戸の中程にある横板をつまむと、右にスライドさせた。
カコッと鍵が外れた音がする。
「開いたっ」
何故ここに部屋があるのか、存在を知っていたのか。思い出せないが、とても重要な気がする。
扉は回転扉だった。
キィイイっと木の軋む音がして、扉が回る。
手元のライトをかざすと埃がキラキラと舞い上がっていた。
部屋に入ると西側の壁にある大きなステンドグラスの窓から、うっすらと月明かりが差し込んでいる。
やっぱり、この部屋を知っている。
北側の壁にはシンプルな姿見が掛かっていた。部屋自体は四畳半ほどの板の間だ。
くるりと部屋を見渡すと、入って来た扉の横にドアがあった。
「また、ドアだ」
ドアノブに手を掛けると、耳を澄ました。
微かに中から音がする。
『…にゃおん』
猫の声?
ドアを開けると、細長い室内に所狭しと本棚が並んでいた。その中に一箇所ぽっかりと隙間が空いていた。どうやら扉を隠していた本棚はここに置いてあったのだろう。
窓際に置かれた腰ほどの高さの本棚の上に、庭で見かけた猫が座って此方を見ている。
青い瞳に月明かりに浮かぶ銀色の毛並み、絵画になりそうだ。
「って、ボーッと見てる場合じゃない。閉じ込められてたのかな?迷い込んだとして、どこから入ったんだろう」
慌てて室内を見渡しても隙間なんて見当たらない。
『自分で入ったんよ』
女性の声だ。ぱっとライトを声の方にかざす。
猫しか居ない。隠れるような場所はない。
耳が変になったのか、夢でも見てるのか考えあぐねると猫が口を開いた。
『眩しいんやけど、光を当てんといてもらえる?ウチの声が聞こえるんならね』
猫の鳴き声に女性の声が二重音声のように被り、私の耳に届いた。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。更新が早いのか遅いのか、判断つきませんが頑張ります!




