畑の拡張
今朝は昨夜の疲れが残っていたのか、寝覚めが悪い。
「朝か…」
ぼんやりする頭で階下へ降りると、意外にも部屋と台所は片付いていた。昨夜は日付が変わる頃まで土小人の宴会が続き、八坂くんと鹿島くんは絡まれていたので美砂ちゃんと途中で抜け出した。
昨日ほど人家が離れていて良かったと思った日はない。
三人はさっさと引っ越して来たい、と言いながらも日付が変わる前には帰宅していった。
残りの片付けは朝にしようと、二階へ上がったのは三人を見送った後だった。土小人たちが片付けまでして帰るとは思えないし…
居間でぼんやりとしていると、目の前に熱いお茶が出された。
『おそよう、今頃起きてきたの?さっさとお茶飲んだら仕事しなよ』
桂兎の出したお茶は、昨日売れ残ったどくだみ茶だ。鉄のフライパンで乾煎りしたので、臭みも無くて香ばしい。
「美味しい、片付けしてくれたの?」
『仕方ないでしょ、家が汚いと落ち着かなかったんだから』
ふん、と言いながらも積極的に家事を手伝ってくれる付喪神に助けられている。
昨日はつけられなかった収支ノートをちゃぶ台の上に出して記録をつける。
そうだ、尾上の店に野菜を売ったお金で河童たちに新しく野菜の苗を届けよう。トマトばかりでは、河童の栄養も偏りそうだ。
土門の報告では八百屋の修理は八割方が完成している。他にも並べるものがなくては、あまりに淋しい。
「修理を頼んだお店を見に、これから八俣町へ行くけど桂兎も一緒に行く?」
『暇だし、行ってもいいけど』
これは結構乗り気だな、と最近は分かるようにもなってきた。
“産土”は前回のことがあってから、八坂くんによって一度に使うのは二回まで一日四回までと取り決められている。
桂兎の手を引いて鏡を越えると、屋敷の外に出て河童を探す。
まだ昼前だから屋敷近くには見当たらなかった。
河の近くまで行ってみると、ようやく浮島で一匹が畑を耕しているのを見つける事ができた。
「おーい、河童さーん。お話があるので、こっちに来てもらえますか」
河童は声に気がつくと、河に飛び込みこちらへ泳いでくる。
『紅実子様、お待たせしてすまんかったべ』
「大丈夫です。今日は屋敷周りにも河童さんたちの姿が見えなかったので、お仕事中でしたが声をかけさせてもらいました」
『あー。今は皆、町の方へ出かけてるだよ』
「町に?」
『モグラ商会さ呼ばれてんだ。何でも水際の計測で人手がいんだと』
それはきっと、湿原の工事に関わる仕事だろう。
『そんから魚屋寄ってけえってくるだよ』
河童たちは鯛めしを食べた後、魚を買ってきては白ご飯に入れて炊くのがブームらしい。
『紅実子様が作られるほど、上手くはできねが』
川魚よりは海の魚、鱗を取って内蔵も出したほうが美味しいと積み重ねで分かったようだった。
「そうだったんですか、早くこちらにも調理するための小屋が必要ですね」
ハッと河童に声をかけた当初の目的を思い出す。
「そうだ、畑の拡張をお願いしに来たんだ」
『畑さ増やすだか?』
「他にも調理次第で美味しい野菜が沢山あるんですよ」
そう聞くと河童はゴクリと喉を鳴らした。
おはようございます。更新遅くなってしまって、すみません。




