打ち上げ無礼講
開始から一時間が経過する頃、店の前にはチラホラとお客さんが立ち止まるようになった。
「この筍はどこで採れたの?」
年配の女性が質問をしてくる。
「うちの竹林で採れました。今朝茹でてパックしたところなので新鮮ですよ」
売り子も大分板についてきた。
筍は市場よりも少し安めに売っているので、やはり売れ筋商品になっている。
手作り市をフリーマーケットと混同しているのか値切ってくる人も居たが、全体的に売れ行きは好調だった。
買い物に来ているのは地元の人が多く、次いで車の休憩で通りすがりに買って行く観光客。
尾上の店は午前中で殆どのお惣菜が売り切れたようで、午後には店じまいを始めて帰宅したようだ。
終了時間が近づく頃、売れ残っているのは山菜と筍が少しとどくだみ茶が半分ほど。
見た目が地味だった割には健闘した方ではないだろうか。
あっという間に時間は過ぎて、帰宅する頃には四台分の台車で運んだ商品は一台で軽々と運べる量になっていた。
「よく売れたね。これでリフォーム分に少し充てられるね」
「今日はお手伝いありがとうございます。ささやかですけど、お礼にお肉を買ってあるので帰ったら庭でバーベキューにしましょう」
どこか焼肉屋にでも行けたら良かったが、ここは少しでも節約しなければならない。
そのうち牛肉も向こうで手に入らないだろうか。
でもさすがに牛を捌いたことはないので、ハードルが高い。
庭にはレンガで作ったバーベキューコンロが出来ていた。
『今晩は、お相伴に預かります』
コンロの横から土門と土小人の人々がぞろぞろと出てきた。
ここのところ、向こうの修理代金は食事や酒で払うことが日常化している。
食事をしながら進み具合も聞けるので一石二鳥だった。
あまり高価な牛肉は予算的に買えなかったので、赤身の肉を特製のタレで漬け込んである。箸休めに水キムチも用意した。あとは沢山炊いたご飯でおにぎりを作る。
皆、縁側に腰掛けて肉が焼けるのを待ちながら話に花を咲かせる。
『八坂の旦那、図面見ましたよ。今回ばかりは無理だと思っていましたが、あの図面を見ていると出来るような気がしてきました』
「俺が考えたんじゃない。そもそも、俺も湿原に遊歩道を建設するのは初めてだ」
『今、修理を手がけている店にね。出たんですよ、コレが』
そう言って花礫が手をくねらせる。
「なに、幽霊でも出たの?」
鹿島くんが、冗談ぽく相槌を打った。
『コレってマムシだよ!毒だってあるしサイズがさ、でかいんだ。儂らひと飲みだぜ。ま、返り討ちにして酒で漬けてやったけどな』
「うわぁ、蛇入りの酒とか趣味悪ーい」
美砂ちゃんが茶々を入れる。
『マムシ酒はこっちにもあるだろ、旦那方も必要な時にゃ…』
「花礫さん、呑み過ぎてるねぇ。お水飲ませてあげるよ」
鹿島くんが花礫を掴むと井戸へ向かって歩いていった。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
牛肉まで手を出すか悩みますが、意外とあっさりいってしまうかも。




