手作り市
日曜の朝、四人は大きな荷物を台車に載せて家の前の坂道を下っていた。
昨日は八坂くんの誤解を生む発言のせいで、美砂ちゃんと鹿島くんに説明するのに骨が折れた。
お陰でことの始終を見物する河童たちも出てきて、筍の作業が遅れ今朝まで持ち越してしまったのだ。
今日は道の駅で手作り市が開かれる。
主力商品は筍の水煮と朝掘り筍だ。その他にはどくだみ茶と金柑の甘露煮、山菜の盛り合わせだ。
結局、ラインナップは渋い山の土産物屋になってしまった。昨日の夜から今朝にかけて河童たちが山に入って収穫してくれたので、量だけは山ほどある。
結果、四人で台車を押すことになったのだが。
会場に着くと開始まで一時間と言うこともあって、あちこちで開店準備が進んでいた。
「今日は来てくれて、ありがとうね」
チラシをくれたレジのおばちゃんが、受付をしてくれる。一日の出店料はとても安い。
「紅実ちゃーん、場所ここで合ってる?」
美砂ちゃんが木陰になった白線の一画を指差す。
「…はい、そこで合ってます」
場所を確認すると永島先生のゼミから借りてきたテントを鹿島くんと八坂くんが手早く設置した。
「飾り付けはどうしましょう」
会場で貸し出している長テーブルに荷物を移しながら聞くと、美砂ちゃんが背負っていた荷物から可愛い布地やガーランドを取り出し始める。
「飾り付けは私に任せてちょーだい!」
そう言うと鹿島くんと八坂くんを使いながら、テキパキと陳列を始めた。
「おはようございます。今日は宜しくお願いします」
自分の店の支度は終わらせたのか、尾上が挨拶に訪れた。
会場の少し離れた所にはなったが、今日は尾上の店も出店するらしい。
【誓約】の話はしてあったが、美砂ちゃんの顔は引き攣っている。
「大丈夫、約束ですからね。私は何もしませんよ」
尾上は両手を挙げて、降参のポーズをとると戯けて言った。
「私は、という事は他の人はどうなんでしょうねぇ」
鹿島くんが毒のある笑顔で返すと、尾上はクスッと笑った。
「ええ、私には兄が居ましてね。此方へは早々来ませんし、私には連絡もありませんが警戒するに越したことはないかと」
爆弾発言だ。
固まった私を見て、尾上はなおも続ける。
「兄者の好みは、どちらかと言えば八坂くんと似ているかも知れませんねぇ」
なぜ尾上が八坂くんの好みを知っているのか。
聞きたい事は山ほどあったが、会場には始まりを告げるアナウンスが流れた。
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
手作り市も見に行くばかりですが、飾り付けや商品の並べ方など皆さんとても工夫されていて見ていて楽しいので大好きです。




