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番外編 八坂 颯馬

最初に見た印象は“真面目そう”だった。


笹木 紅実子は俺達よりも二つ歳上で、就職の倍率が厳しい年に当たったようだ。


ゼミの永島先生が長年憧れていた家を改築できると、機嫌よくしていたのを覚えている。

それを聞いて、どうやらまた現場に駆り出されると、鹿島とうんざりしていた。


下見の日、先生の車に乗って現場へ向かう。

湖岸を走る道から外れ山の中へ進んでいく。こんな山の中に、これから研究のためとはいえ通うなんて面倒くさい。


車が止まり目的の家が目の前に現れる。

長年先生が憧れていただけあって、歴史的にも価値の高そうな家屋だった。玄関で呼び鈴を押すと家の中からは老婦人が出てきて、先生と親しげに挨拶をする。


老婦人は先生の憧れていた“ユキさん”だった。


「今日は忙しいところ、こんな山の中に来てくれてありがとうね」

そう言うと家の中へ招き入れた。


玄関でスリッパに履き替えると、家の中を案内される。間取りや修理の必要な箇所などを簡単に書き留めながら見て回っていると、この家に移り住む“ユキさん”の又姪が帰ってきたようだ。


挨拶のためにぞろぞろと玄関へ戻る。

狭い廊下から順番に挨拶をしていくと、最後尾にいた自分の番が回ってきた。


「八坂、です」

彼女は挨拶をするごとに一々頭を下げている。

緊張した様子からあまり人付き合いが得意ではないのだと思った。


「ね、すっごい可愛い子だよね。友だちになれるかな?」

高倉は派手な見た目のわりに、中身が男なので女友達に憧れていると常々言っている。


「紅実子ちゃん、紅実ちゃんって呼ぼう」

鹿島は見た目の通り、フレンドリーな奴だ。たまに付き合い切れないけれど。


測量を始めると違和感を覚える箇所があった。廊下の突き当りから、その西側にかけて空白の場所があるようだが入り口がない。


「古い家だからね、昔は食料を隠したり人に見られては困るものをしまうために隠し部屋が作られたりしたもんだよ」

永島先生は図面を見ながら言うと、図面の描かれた紙をそっと閉じた。


今、急いで調べなくても良いということか。


二階の測量をしていると階下から昼食の知らせる声が届いた。


鹿島がいつもの軽口で言う。


「二階からの眺めも素敵ですね。次の週末は泊りがけで来たいです。寝袋持ってくるので、板の間でも寝られますから」


紅実子の顔は明らかに嫌がっている。どれだけ顔に出るのか。

昼食後、高倉が銭湯へ誘えば真っ赤になって断っていたし、こんなに分かりやすい人は見たことがなかった。


初めて興味を持ったのは、その時だと言えるだろう。

百話を越えたので、以前から書くか迷っていた番外編を書きました。八坂くん目線です。

続編もまた需要がありそうなら、書こうかと思っています。

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