三者三様
思い返せば、私は幼稚園の頃から内向的だった。
同い年の子が皆でごっこ遊びをしたり、かけっこをしている時も一人砂場で遊んでいた。
つまりコミュニケーションが苦手なのだ。
小学校の途中から学校へ行かなくなってからは、輪をかけて同世代を避けてきた。
幸い今のバイト先は歳の離れた人が多く、良い人ばかりだったので問題なく過ごせた。
問題なのは同年代のノリだ。空気読もうよ、的な。
読もうと空回りし過ぎて疲れてしまう。
もう放っておいてほしいと思ってしまう。
「さ、今日は計測が出来たら解散しましょう。明日から作業に入ります」
永島先生の号令に、はっと意識が戻る。
時計を見た。そろそろ昼食の支度を始めなきゃ間に合わない。
慌てて台所へ向かうと、すでに大叔母がお米を研いでいた。
「あら、紅実ちゃん。向こうのお手伝いは大丈夫なの?」
「うん、専門的な話をしてたから邪魔しちゃいけないと思って。お昼ご飯は私が作る約束だったし」
出遅れたので気まずく口ごもった。
「じゃあ、野菜をお願いしようかな。炊飯器がないから、お米は土鍋で炊くからね」
「えっ土鍋でなんて、炊いたことがない」
「置いていってあげるから、明日からは自分で炊くのよ。今日はしっかり見ておいてね」
一回で覚えられるだろうか。
シンクの中に転がった野菜を切りながら、炊き方も確認する。
ご飯はおにぎりに、野菜は豚汁を作る予定だ。
大叔母がゴソゴソと保冷ボックスから、ビニールに入ったぬか漬けを取り出す。胡瓜と蕪だ。
大叔母の指揮のもと、昼食は正午に完成した。
「お昼ですよ〜」
大叔母が声をかけると一目散に…永島先生が走ってきた。
「これはこれは、いい香りですね」
続いて母と男の子二人が二階から降りてきた。
「二階からの眺めも素敵ですね。次の週末は泊りがけで来たいです。寝袋持ってくるので、板の間でも寝られますから」
鹿島くん夜は帰ってくれ。私の気力がもたない。
離れにある五右衛門風呂から美砂ちゃんも戻ってきた。
「五右衛門風呂まだまだ現役で動きますよ!一度入ってみたいな。あ、ムカデを見つけたので潰しておきました」
美砂ちゃん、男前だ。
人数がちゃぶ台には納まりきらなかったので、学生たちと私は床机が置かれた縁側へ並んで座った。
居心地悪く、縁側のすみっこへ体を寄せる。
「紅実ちゃんは、今日からここで住むの?」
お茶を飲みながら美砂ちゃんが話かけてきた。
「いえ、まずは週末だけ泊まって徐々に荷物を運び込む予定です。水回りとかが出来たら住みやすくなるので、移ってくるつもりです。この辺りだと銭湯も少し遠いので」
なぜ私の方が敬語なんだ。
「銭湯!銭湯いいよね〜私も行きたいな。あっ今日も銭湯行く?一緒に行こうよ。私、車出せるよ」
「え…」
思考が固まる。
「美砂の運転はやめておいた方がいいよ〜。寿命がガンガンすり減るし」
鹿島くんが助け船を出してくれた。
苦笑いで返す。
「鹿島、ちょっと酷くない!?」
美砂ちゃんの対象が鹿島くんに移った。とりあえず初対面の人と銭湯へ行く苦行は避けられたようだ。
ポイント評価頂きました!嬉しいです。いつもお読みいただき、ありがとうございます。




