シルフたち
どうしても、一通りは店を見ておきたい。
地図もないので、記憶を頼りに店を巡る。
店はどれも個性的で樹液の店なんていう物もあった。河童たちの目当てはそこだったようで、店の前にはトマトを抱えた河童が列をなしていた。
そんなに大量のトマトをどうするのか心配になるが、きっと妖精同士でも物々交換があるのだろう。
他にも古本を売る店、ハーブの種を売る店、動物用のお世話道具を売る店があった。
「動物用のお世話道具って可愛いですよ」
店先に並ぶ艶々とした木の櫛は、動物の毛並みを梳くためのものだ。
『馬用に一ついかがですか?』
普段はパンでも売っていそうなおばさんが声をかけてきた。
「馬ってこんな櫛を使うんですね」
『私たちの乗る馬は人の乗る馬とは、大きさが違うからね。その櫛でもじゅうぶん事足りるさ』
ポニーだろうか。妖精たちがポニーに乗る姿をイメージするとメルヘンだった。
もう一つ先の店では木で出来たカトラリーが売られている。
ベルベットのような布の上に、きちんと並べられたスプーンとフォーク。ナイフも木で作られて、大中小と様々なサイズが揃っていた。
「可愛い、このサイズならデザート用のスプーンとフォークとして使えそう」
店の奥には隠れ気味に、タンポポのような頭をした女の子がこちらを見ている。
「このスプーンも交換できますか?」
女の子は黙ってうなずく。
店主のようだが警戒されているらしい。
「このお菓子と交換してもらいたいのですが」
さっきのチョコレートとパイ菓子を鞄から取り出した。
店の奥からおずおずとアサギマダラの様な羽を羽ばたかせて、菓子を確認しに来る。
『…美味しそう』
匂いを確認するとポツリと呟く。
「良かったら試食してみますか?」
女の子に問うと、こっくりと頷いた。
個別包装なので、試食が簡単にできて良かった。
菓子を一つずつ渡すと、恐る恐る一口齧る。
あっという間に試食の菓子を平らげると。その顔はみるみる輝いていった。
『これ、美味しいね。どのスプーンと交換したいの?』
彼女の名前はアオイ、主に妖精や妖怪たちから注文を受けスプーンやフォーク作りを生業としている妖精らしい。
接客は苦手なので、市の日は店の奥で隠れているようだった。
サクラで出来たスプーン二本と交換してもらう。
『紅実子ちゃん、鏡守り様だよね?ハーブの本はもう見つけた?』
スプーンを手漉きの紙で包みながら、アオイが聞いた。
「見つけたんですが、まだあまり書き換えてなくて」
『ハーブの本にも早く力を注いでね、そうしたらいつでもお話出来るようになる』
「ハーブの本はアオイさんたち、妖精が司っているんですか?」
アオイは小さく頷くと、こう続けた。
『私たちはシルフィー、風を司る者だから』
ブクマと評価をつけていただき、ありがとうございます。
書き方も試行錯誤ですが、より読みやすいように自分のスタイルを見つけて行きたいと思います。




