プロローグ
一億総活躍社会…
この国では深刻な人手不足だという。
それが信じられないくらいには、面接に落ちていた。お祈りメールだって暗唱できる。
私の名前は笹木 紅実子。
上がり症で見た目もぱっとしない二十四歳。
企業の内定が決まらないまま、大学を卒業してもうすぐ季節は一巡りしようとしていた。そろそろ周りの目が気になってくる。
今まで受けた企業の中には、最終まで残ることもあったがここ暫くは一次落ちのお祈りメールばかり。
さすがに焦る。
もともとのんびりとした性格だったのでスタートダッシュに出遅れたのも災いした。
それでも両親が急かさないのは、私が小学校・中学校と行っていなかったからだと思われる。
通信で高校を卒業し、なんとか大学に受かって一安心だと思っていたのに…
一先ずはバイトを転々としているが早く正規雇用を探さないと。
両親には心配ばかりかけている。
「人手不足は都会だけじゃないの?」
ベッドに転がり、求人サイトを眺めるうちため息が零れた。
「紅実子、起きてる?」
ノックとほぼ同時に部屋のドアが開いた。
「さっきユキ叔母ちゃんから電話があって…あなた、明日の予定は?」
母の話は大体要領を得ない。
「明日は…うん。予定はないけど。」
二次面接(仮)の字を横目で見ながら答えた。さっきお祈りメールが届いた企業だ。
「お祖父ちゃんが亡くなって二年になるじゃない? ユリ叔母ちゃんが、ほら、そろそろ三回忌だって言うから。あの家も片付けないといつまでも放っておけないし……」
私は黙って母の主語を待った。
「明日、空いてるならお祖父ちゃんの家の片付け手伝ってね。」
言い終わると返事も待たず、部屋を出ていく母であった。
ご一読いただき、ありがとうございます。
初めての投稿です。不慣れなところがありますが、定期的に更新できるよう頑張りますので宜しくお願いします。
誤字報告ありがとうございます!