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序章:おはようございます


ここはどこだ…


俺何してたっけ?


これは…夢?


青年は目を開けると見知らぬ部屋にいた。まず目についたのはパチパチと火の粉を散らしている暖炉。辺りを見回すと木のテーブルやソファなどもみつけた。

子供のころに家族でバーベキューに行ったときに泊まった山小屋のような部屋だ。

「おはようございます」

唐突に背後で声がしたので振り返ってみると自分より少し年上に見える女性が椅子に座っていた。

驚いて固まっていると、女性が困ったような顔をして再度口を開いた。

「おはようございます。旗本優思さんで間違いありませんか?」

「はい、そうですけど…あなたは誰ですか?」

質問を投げ返すと彼女は少し笑って自己紹介を始めた。

「私に名前はありません。役割は様々な世界のバランスをとり監視すること…。やっていることはあなた方の世界でいう神と似ていますね。」

「は、はぁ…」

正直何を言っているのか理解できなかったのでさらに質問をしてみることにする。

「何で俺は見知らぬ部屋で自分のことを神と言う女性と一緒にいるんですか?」

「あなたが死んだからです」

「俺が死んだ?」

何をバカなことを言ってるんだろうと最初は思った。しかし、記憶が少しづつ戻ってきて自分がこの部屋に来る直前のことを思い出した。

「思い出していただきましたか?あなたは高校二年生の旗本優思さん。ひどいいじめを受けていて、いきすぎた暴力によって絶命してしまいました」

「あぁ…思い出しました。じゃあここは死後の世界ですかね?」

「そうなります」

思い出した。俺は学校でいじめを受けていた。教師も交じっての酷いいじめだった。度重なるいじめを受けて、最後に行き過ぎた暴力を受けて気絶したんだっけ。

まさか死んでるとは思わなかった。いじめのことを思い出すだけで怒りがこみあげてくる。

「死因からさっするに自分に危害を加えた人間が憎くて仕方ないですよね…?」

「ああ、憎い。いつか必ず復讐してやろうと思っていましたがまさか死んでしまうとは…」

「……復讐はできませんが、新たな人生を歩んでみようとは思いませんか?」

少し考える。ここは死後の世界だし俺を生まれ変わらせるのが目的なんだろうということを思いついたところで彼女は驚くことを口にした。

「他の世界で転生してみませんか?」

「転生…ですか?」

「はい、記憶はそのままに異世界で新たな人生を歩んでみないかという提案です」

「記憶をまっさらにして新たな人生を歩むというわけでは無くですか?」

「旗本優思さんがそう願うのであればそのような対処もできますが…」

彼女はそこでコホンと咳ばらいを一つして説明を始めた。

「今言っていただいたように記憶をまっさらにして生まれ変わらせることもできます。しかし、あなたの生涯の悲惨さから一度だけチャンスを与えたいと考えているのです」

「それが記憶を残して異世界への転生という訳ですか?」

「そうです、元の世界に転生させることは生き返らせるということと同義になりますので、世界の法則からみてやってはいけませんが、他の世界であれば生れ落ちるという形になるので可能です」

「ふむ…」

本来であれば生まれ変わるところを、神様の慈悲で異世界に転生させて第二の人生を歩ませてくれると…かなり面白い話だ。しかし、いくつか質問をしたい。

「転生の件はぜひ受けたいと思っていますが、異世界というのはどういう場所ですか?」

「はい、今回旗本優思さんに向かっていただく世界は魔法が存在し、様々な種族が存在し、地球の二倍の広さを持ちます。また技術力は地球よりは低いですがあります。ここをあなたの転生先に選んだのは地球と似た環境であり、あなたがこの世界になじみやすいと考えたためです」

「なるほど、ではもう一つ質問ですが、転生後の俺の姿はこのままですか?」

「はい、あなたの姿のままで転生を行いたいと思っています」

異世界はいわゆるファンタジーと呼ばれる世界で間違いないだろう、見た目も元の人間のままで転生されるみたいだし…

「とても楽しそうですね、僕をその世界に転生させてください」

「承りました」

彼女はにっこりと笑ってつづけた。

「それでは自身の種族やステータスを決めてください」

「あれ、人間以外にもなれるんですか?それとステータス?」

「はい、旗本優思さんが望めば人間にすることもできます。少し待ってください」

そういうと彼女は近くにあった本棚から本を二冊取り出し俺に手渡した。

「一つ目の本ではあなたの種族を選んでください、その後二つ目の本ではステータスを決定することが出来ます」

「まるでゲームだな」

笑いながら一つ目の本の中身を見ていく。

人間、エルフ、ドワーフ、巨人…悪魔?

俺はいじめを受けているとき、人間は何て醜い生き物なんだろうと思ったことが何度もあった。抵抗できない生き物をいじめて優越感に浸る、なんて汚い生き物なんだろうと。

せっかく転生できる機会をもらったんだし、せっかくなら人間以外になって少し人間を困らせてやりたいという考えが頭をよぎった。

「俺、人間じゃなく悪魔になろうと思います」

そのとき彼女が少しニヤッと笑ったような気がした。

「わかりました、あなたが悪魔を選んだのは前世で人間が憎いと思ったからでしょうか…それではこちらにステータスを決める本がありますのでどうぞご覧になってください」

そういって彼女は二冊目の本を見開いたまま渡してきた。

「うへぇ…」

その本に書いてあったのは様々なステータスとスキルの羅列で全部効果を読むだけで30分はかかりそうな勢いだった。

「あの、おすすめを取得してもらってもいいですか?」

「構いませんよ?どのようなステータスがお好みですか?」

「魔法とか難しそうなんでとりあえず死なないようにしていただければいいです」

「承りました。それでは死にずらいようなステータス設定、スキル設定を行いますね」

「ありがとうございます」

そうして彼女は3分ほど本をぺらぺらとめくりながら俺のステータスを決めてくれた。

「はい、ステータス設定を完了しました。それではいよいよ飛び立つときが来ましたが準備はよろしいですか?」

「大丈夫です、よろしくお願いします」

そういうと彼女はにっこり笑って何か呪文のようなものを唱えだした。その瞬間自分の足元に魔法陣のようなものが浮き出した。

そうして彼女が詠唱を終わると体が光り、溶けだしていくような感覚に襲われた。

「最後に1つルールですが、あなたが転生してきたことは口に出さないでください。ルールを破った瞬間にあなたの存在を抹消します」

「怖いこと言いますね。分かりました」

「それではお気をつけて、第二の人生を謳歌してください」

「俺を転生させてくれて、俺の人生にもう一度チャンスをくれて本当にありがとうございました!」

「いえいえ、礼には及びません。あなたはこの世界のバランスをとるためには必要不可欠な存在なのですから…」

「えっ…」


バランス?どういうことだ?消えゆく視界の中で彼女は最後にニヤッと笑っていた。

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