1.デートです!
11月12日、書籍の第6巻発売予定です。
よろしくおねがいします。
アプリで見た天気予報は晴れ時々くもり。
湯築屋の外と中では気候と天気が違う。誤ってしまうと、ちょっとばかり悲惨な目に遭うのだ。気をつけなければ。
長い髪をゴムでポニーテールに一まとめ。レースのシュシュで飾ると、一段お洒落度が高くなった気がする。デニムのスカートも、白いレースのついたものを選んでみた。膝丈で清楚、だと思う。
アイシーブルーのタンクトップのうえから、ゆったりとしたレースのカーディガンを羽織った。
鏡で姿を確認して、九十九は一応納得する。
大学生になってから、私服の傾向を変えてみた。ミニが中心だったスケートの丈を長くして、ふわふわしたシルエットを多くしている。化粧もはじめた。
大学へ通っていて思うのだが、周りがすごく大人びて見えるのだ。垢抜けている。浮いてしまわないように服を選ぶのが大変だった。
春の間は背伸びしている感覚があったが、夏になると少し慣れてくる。コツをつかんで、化粧も時間がかからなくなった。
「九・十・九」
支度をして玄関まで向かっていると、弾んだ声で名を呼ばれる。案の定、いつの間にか現れたシロだった。
「大学は休みなのではないのか? 今日は日曜日であろう?」
「そうですよ」
「どこかへ行くのか? もしかして、儂とデートか?」
「そんな約束してませんよね?」
「約束はなくとも、夫婦であろう」
「シロ様、変な方向にポジティブですよね」
「褒めてくれるな」
九十九はさらりとシロを流しながら、玄関でスニーカーを履いた。大学へ行きはじめた当初は、パンプスなども試したが……あまり馴染まなかったので、履きこなすのはあきらめてしまった。すぐに脱げてしまうのだ。パンプス用の靴下も布面積が狭くて、中で脱げて丸まりやすい。秋になればブーツがあるし、まあいっか。
「まあ、デートと言えばデートですけど」
「本当か? 本当か? 儂もおめかし――」
「シロ様とのデートじゃないですよ」
九十九はスニーカーに踵をトントンと入れながら、にっこり笑った。
「え」
シロは口を半開きにして、文字通り固まっている。石の彫刻のようだ。
「それでは、いってきまーす」
九十九は元気よく言いながら踵を返し、玄関を出ていく。うなじでくるんとポニーテールが跳ねた。
うしろで、「九十九ぉぉおお!」と情けない声と共に、床をダンッと踏みならす音が聞こえたが、無視だ無視。




